□■FF7

□双やつで
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『今日、夜出かけてくるから』


ザックスが、朝そういっていた。
どうせまたいつものように遅くなるだろうと、待っている必要もないし明日も早いし、
まだ寝る時間には少し早いけどいいや、って。


さっさと、寝てしまおうと思って、風呂から上がってきたところだった。
パジャマを着て、髪から滴った水でパジャマが濡れないように、適当に拭いて首にタオルをかける。

まだ身体から湯気が出ている状態で、さっさと脱衣所から出た。
部屋の中の、暑すぎず寒すぎずの空気が気持ちいい。


脱衣所からでて真っ先に向かう場所は台所。
成長期の今、160cmしかない身長を何とか伸ばそうと、毎日牛乳を飲んでいた。
それは風呂上りだけではなく常日頃からだが。
おかげで、一日2リットルのペースで消費されていく。


牛乳を飲むと背が伸びると聞くが、体質にもよるらしい。
「らしい」ということなので、少しでも可能性があるのなら、と続けているわけだが。


牛乳のおかげか、ただ成長期だからなのか。
ここ一ヶ月で2cm身長が伸びていた。


冷蔵庫からパックの容器を取り出し、グラスにも注がずそのまま口をつける。
残りがちょうどコップ一杯分くらいだったので、飲みながらリビングへ戻った。

特に何を見るわけでもないが、テレビのリモコンを手にソファに座る。

…つもりが、そこに図体のでかい人間が横たわっていた。

驚いて、危うく手にした牛乳を落とすところだった。
慌てて両手で支えて、持ち直す。


「な…なに、帰ってたの?」


むせて噴出しそうになった牛乳を無理やり飲みこんで声をかけた。
が、思わずどもってしまった。


「あ…?あぁ…ただいま〜…」


見事に気の抜けた返事が、なぜか顔の上にかけられたタオルの下から聞こえてきた。
半分寝ぼけていたのか、そういいながら起き上がる動作は緩慢だ。
そして、起き上がると同時に顔から落ちたタオル。


「…………」

「あ゛……」



落ちたタオルが濡れていたなんてことは、この際どうでもよくて。

ザックスが急いでタオルを拾い上げて顔を覆うが、その時すでに遅く。
クラウドの目にはバッチリ映っていた。

確かに、今までにも見たことのある光景ではある。
それも何度も。


「…ぷっ」

思わず噴き出してしまい、手で口元を押さえる。
が。


「…くっ…うくくく…くくっ…ふっ…あは…」


堰を切ったように、一旦笑い出したら止まらず、押し殺そうとして殺しきれない笑みがしばらく続く。


「声殺して笑うなっ!!」


ちら、とザックスを見てはまた笑い出すクラウドに、耐えかねて喚いた。
今はタオルの下に隠されているが、頬を平手打ちされた痕でそこが赤くなっている。
両頬に左右対称の見事な手形。


「…だって……ぷっ」


珍しくクラウドの笑いのツボに入ったらしく。

笑うのをこらえようとすると、それでも声が笑ってしまって。
それがザックスの不服そうな表情を深めることになる。

その姿がまた、笑えるのだけど。


「………」


クラウドをチラっと見やって、そのまま視線をそらす。
濡れタオルを頬に当てたまま向こうをむいて拗ねていた。


そんな子供みたいに拗ねたザックスが、ちょっと可愛いなんて思ってしまった。


「クラウド一筋〜って、他の女清算してるってのにこの仕打ち…」

「………っ」


今度はクラウドが黙る番だった。
どうしてこの男はこうも直球なんだろう。


「ちょっとくらい慰めてくれたっていいじゃんよー」


口を尖らせてぶーたれている。
自分よりでかい図体してやっぱり子供みたいだ。


両頬に手形をつけられた姿は面白くも、気の毒だなとは思う。
が、恨みがましい目で見られても困るのだ。
実際、自業自得だし。

そんな目で見られてどうしろというのだ…。
アハハ…と乾いた苦笑を漏らす。


「はいはい、がんばってね。…で、あと何人残ってるのかなー」


2つ返事で、ありきたりすぎるお座なりな励ましのついでに聞いてみた。
実際気になるところではある。




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