□■FF7

□双やつで
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「2人、かなぁ…ハハ…」


「…へぇ……いったい何人と付き合ってたんだ…」


クラウドは目をすっと細めて、なるべくザックスの顔を見ないように視線を斜め下に流す。
その呆れたような目。


「何人だろ…?」


「俺に聞くな」


後ろ頭を掻きながら目をそらすザックスに、一瞬冷たい視線を投げかける。
だいたい、人に告白するつもりがあるならそういうものは先に全部清算するものじゃないんだろうか。

自分で聞いたこととはいえ、既に複数人清算した上でまだ残るという”2人”の言葉を聞いて、
平手だと言っても殴られて気の毒だと思っていた気持ちは霧散した。
素直に答えたザックスが馬鹿を見た、と言えなくもない…かもしれない。


さっき笑っていたときとは、打って変わった無表情。
クラウドの無表情なんて見慣れたはずなのに。
なぜ、こんなに怖い。
疚しい気持ちも重なって、ザックスは常とは少し違う様子のクラウドに内心焦っていた。


イライラする。
それと同時に不安も感じていて。

でも、不安になるのも無理はなかった。
実際今だって、寄ってくる女の人はたくさんいて選び放題だ。
それなのに、それを全部振って自分のそばにいる。
今は『クラウド一筋』なんて言ってるけど、一時の気の迷いでそのうち捨てられてしまうかもしれない、と。

性格だって素直じゃないし、ザックスみたいに明るくないし、口は悪いし。
自分で思っていて虚しくなるけど、いいところなんて何もない。

どうして、ザックスが自分を好きになったのかわからない。
デメリットこそありはすれ、メリットなんてないじゃないか。
友達一人いなかった自分なんか。

とどまるところを知らないネガティブ思考に、自分自身辟易する。
そうしていつの間にか沈んだ表情で、ばつが悪そうにちら、とザックスを見やった。


ザックスの顔に視線を向けて、クラウドは目を見開いた。

今までなるべく、出来るだけ、見ないようにしていたのに。
なぜ、どうして…顔からタオルが消えている。
真っ先に目に映る、2つの赤い手形。


「………」


必死に絶えた。
勝手に不機嫌になって、空気を重くして。
今、噴き出したら駄目だ!

そう思ったのに。そう、思ったのに…。
よりによってどうして、今その顔をしているんだ。


「……ぶっ…」

こらえきれずに噴き出した。


「クラウドっ!?」


「ご…ごめん……」

「おーまーえーなぁーー」

「だって、しょうがないだろ!?顔、…せめてほっぺた隠してろよっ」

「な…っ…」

軽く逆切れ。
しかしあんまりな言われようである。
思わず両頬を押さえてクラウドを凝視する。
そしてそのまま、「あんまりだ…」と呟いた。

ザックスとしては半分冗談、半分本気。
それを聞いて、クラウドは

「…ごめんごめん…言いすぎたかも…」


と、そう言いながらもザックスの様子になおツボを突かれて、笑みの形に顔を歪めた。



ザックスは、それでも珍しいクラウドの姿が見れたから、こんな風に笑われるのもたまにはいいか。

…なんて思ったりした。
今回みたいに痛いのは勘弁だけど。
だから例え気持ちの篭っていない、冗談のような”ごめん”にも


「おぅ…」


両頬を隠したままで応えた。


しかしそのあとに聞こえた

”あ、でも今度は3つ手形がついてたりしないかなぁ…”

なんて、ザックスにしたら物騒極まりない言葉は気持ちよく流して聞こえなかったフリをして。


それでも、3つ目の手形ってどうやってつけられるんだ、なんて思わず考えてみたりした。




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