□■FF7

□Wish upon a Star
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太陽が沈み闇が空を覆う中、月だけが静かに光っていた。

いつか、交わした約束。
それはそんなに昔というわけでもないのに、なぜかとても遠いものに思えて。






Wish upon a star







「やっぱ全然見えないな……。」

開け放した窓の外を見上げてつぶやいた。
真っ暗な空。
そこに本来見えるはずのものが、ここでは見えない。


「な〜にが?」

「っ!!」


突然、いないはずの人の声と同時に、暖かい腕の感触。
あまりにびっくりして声も出なかった。

振り返ったそこにいたのはいうまでもなく、ザックスで。
いつの間に帰ってきたのか。
そして、いつからそこにいたのか。


思わずビクッと肩が揺れてしまったのが恥ずかしい。


(帰ってきたなら『ただいま』くらい言えばいいのに。)


腕から抜け出して不満そうに見上げる。
すぐに視線を逸らして。

「おかえり…」


そんなクラウドを見て、笑った。


「ただいま」


が、ザックスが答えても視線は逸らされたまま。
視線というか、顔ごと。


覗き込もうとするとさらに顔を背ける。
もう一度覗き込めば、身体ごと背を向けられた。

『おかえり』といったのは本当に口だけである。
なぜか、どうしても顔を見せようとしないクラウドに、また笑った。


理由はひとつ。

『なんだか悔しいから』



ザックスが帰ってきたとき、部屋の電気は消えていた。
もうクラウドは寝てしまったと思ったのだが、そうではなくて。

部屋に入ると、窓は開いていた。
窓の外にあるベランダに、クラウドが風呂上りのままタオルを首にひっかけて立っていた。

ただいま、と声をかけたが反応はなく、クラウドは上を見上げていた。
いつ気づくだろうかと、ベランダの手前、窓にもたれて立っていたが気づく気配はなく。
やがて聞こえてきた声に、後ろから抱きついたのだった。



「で、なにが見えないって?」

再び外の方を向いてしまったクラウドの背中に問いかける。
返ってくる返事の予想は簡単だった。
聞きたいのは、その先。


「星が…」

そういって、また空を見上げる。


「あぁ、ミッドガルは夜でもずっと明かりついてっからなぁー」

一緒になって月しかない真っ暗な空を見上げる。
本当に、星はわずか数えられるほどしか見えない。


「俺の故郷、毎日空いっぱいに零れそうなくらい星が光っててさ」

「ニブルヘイムだったっけか」

(何で知ってんだ…)

「…うん。ときどき思い出して、無性に見たくなるんだ。」


見上げたまま、つぶやく。


「それ…」
「はは〜ん」

「?」

後ろから聞こえてきた、なにやら楽しそうな声に続きの言葉はかき消され、不審な顔で振り返る。

ニヤリ。
音でも聞こえてきそうな笑み。
目が下向きの三日月になっている。


ザックスを見るクラウドの目がますます気味悪げになった。
何が言いたい。


「そ〜でちゅか〜クラウドちゃんはお家が恋しいんでちゅか〜♪」

がばあぁっ


顔だけ振り向いたクラウドをまた後ろから抱きしめた。
しかもなぜか赤ちゃん言葉。
なんて楽しそうな声だろう。


(クラウド、身体冷たい…どんだけ外居たんだよ…)

楽しそうな声とは裏腹に、冷え切ったクラウドの身体に顔をしかめた。


人がちょっと真面目に話していたのに。
ちょっと思い出に浸っていたのに。
どうしてこの男は。

ちょっと暖かいけど…。
でも。

じたばたともがきながら腕から逃れようとするが、さっきのように簡単には離れてくれない。


「ザックスなんか嫌いだーー離せっこの変態っ!!」

「うっわ!ひでぇっ変態だなんて…言うに事欠いて変態だなんて…俺泣いちゃう」

「勝手に泣いてろっ」

「…もー放してやんね」

体重をかけ、地に足の着いたおんぶお化けと化した。

「重っ…放せーーーっ」


真面目に話していた自分が馬鹿みたいで、茶化してきたザックスが憎らしい。
でも、『家が恋しい』というのもあながち嘘ではなくて。
図星…きっと顔は赤くなっているだろう。


「俺の」

暴れ続けるクラウドの耳元で話し始める。




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