□■FF7

□視線
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最近、なんだかザックスの様子がおかしい。

ぼぉーっとしてるときとか、ご飯食べてるときとか、テレビ見てるときとか。
訓練中はそんなこともなくて日常でのみ。

時々視線を感じて、その方向を見るといつもザックスがいて。
部屋には二人しかいないわけだから、視線を感じた方向にザックスがいるのはあたりまえなんだけど。
…別の何かだったら、イヤだけど。

で、振り返って目が合うと、視線をそらすか曖昧に笑ったりする。
そんな日がもう何日か続いている。

なに?って聞いても「いや、別に…気にすんな」って。
気にするなって方が無理だ。

テレビを見ながら、こんな風に考えている今もまた視線を感じて、振り返った。
目が合った。
ザックスがなんだか慌てたように、取り繕う。


「……なに?俺の顔なんかついてる?」

「や、なんでもねぇ。」


苦笑交じりの言葉。
まただ…。


「あのさ、言いたいことがあるなら言えば?」


本人自覚しているのかいないのか、いつも同じようにごまかすザックスに焦れていつもは消化不良な気持ちを抱えたまま「ま、いいか…」と打ち切っていた会話を、今日は続けた。
呆れたような、どこか疲れたような口調で。


「わりぃ、ホントになんでも――」

「なくないよね?ここ最近ザックス変だよ。」


それでもまだなんでもない、と言おうとした言葉を遮りさらに問う。
同時にクラウドの探るような瞳が、ザックスを少なからず動揺させた。


(まずい…まいった……)


予想外だった。
いくら、そこらの女の子よりよっぽど綺麗だといっても相手は男だ。



クラウドが入隊した時、同時期に入隊した他の新人とは少し異色な雰囲気を放つ彼に興味を持った。
そして、自分も一般兵時代に使っていた2人用の寮室を、たまたまルームメイトが居らずに一人で使っていることを聞いて。
顔は綺麗だが無口、無表情、無感情で近寄りがたいとソルジャーにまで伝わってきた噂を聞いて。

まもなく快適なソルジャー専用の部屋を解約してまで、クラウドの下に強引に転がり込んだのだった。
単純な好奇心。そう、面白半分だった。


それがこんな…。

気になりだしたら止まらなかった。



最初の頃のクラウドは、聞いていた通りに頑なで素っ気無かった。
人と接することが苦手で、なかなか心を許さなかったクラウドは、それでも時間をかけて次第に心を開いていった。
それは手負いの獣を飼いならした、そんな気分に似ていた。


きっかけは、クラウドが初めて見せた笑顔かもしれない。
困惑したような、怒ったような表情ばかりだったために、その分とても印象的で。
綺麗だと思った。
まだ、成長過程の男になりきっていない中性的な…。

クラウドはザックスには心を許し、よく話すようにもなった。
人前では、やはりまだ表情は硬いがザックスに影響されて少しずつ表情も出てきている。


時間をかけてようやく打ち解けた頃、なんとなくそんな気持ちに気づいてからはごまかすように、ふざけてクラウドに抱きついてみたり、好きだーとか言ってみたり。


だが、女の子と遊んでる時や、抱いているときでさえクラウドを思い出すようになったときは、とうとう重症だと思った。
はじめはそれこそその気持ちを否定していたが、否定したところで消えることはなく。
それどころかクラウドは男だ、と分かりながらも気持ちはどんどん大きくなる。

そして悩んだ末、ザックスは男だろうと俺はクラウドが好きだ、と開き直った。


でもやっとここまで築き上げた関係を壊したくないという気持ちもあって。
その後も以前のように、ふざけて抱きついたり口に出したりして冗談としてごまかしていた。



が…最近、やたらとクラウドのしぐさや表情一つ一つが目に止まる。

気になる。


伏し目がちな横顔とか、俯いた時にふと金髪の隙間に覗く白い首筋、
風呂上りの濡れた髪や、小首を傾げて尋ねるしぐさや、人を小馬鹿にしたような笑みでさえ…。


気づくと目はクラウドに行っていて。
自分の事とはいえ、無意識だから手に負えない。

さらにまずいことに、最近それが増えてきているらしい。
視線に気づいたクラウドが何かと聞いてきても曖昧に濁してきた。
だが、クラウドも痺れを切らした様に不満そうな表情で、曖昧に応じるたびに不機嫌になるのが分かる。

そして今も。



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