□■FF7
□視線
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…そろそろ限界だ。
ザックスは気まずそうに視線を逸らして何事かを考えていたが、突然顔を上げてまっすぐにクラウドを見ると、座っていたダイニングの椅子から立ち上がり、クラウドのいるソファへと歩いていった。
クラウドは思わず自分まで立ち上がり、目の前に来たザックスを見上げる。
見上げられたザックスは腰に手を当てて、額を押さえてしばらく考えるように止まると、ちら、とクラウドを見てそのまま髪をかき上げた。
「クラウド」
「なに…」
真剣な瞳。
その視線の強さに、声に、少し腰が引けてしまう。
じ…、と見られて思わず視線を落とした。
クラウドの戸惑ったような、不安そうな様子に小さく苦笑して。
逃げないようにクラウドの腕を軽く掴んで、顔を近づける。
腕を掴まれたことで何かと顔を上げたとき。
「…?………っ!?」
触れてすぐ離れる、軽いキス。
ことが起こってから、クラウドが自覚するまで数秒。
目をしばたいて、ザックスを見ていたその目が大きく見開かれる。
「な、んっ…」
反応を示したのを確認して、もう一度キスした。
今度は深く。
抵抗する前に、片手で頭を押さえもう片腕を腰に回して抱きこみ、薄く開いたままの口に舌を差し入れて深く口付けた。
ザックスに舌を絡め取られて、どうしたらいいのか分からなくて。
ぎゅっと目を閉じる。
自由な手でザックスの胸を押しやった。
力の差が大きいか、それでも離れない。
「…っん…は…んぅ」
力が抜ける。
角度をかえて続けられるキスに、苦しい声が漏れた。
慣れないキスの息苦しさに、胸を押し返していた手で今度はどんどんと叩いて訴えると、長いキスからようやく解放された。
上を向かされたままだった顔を下げ、思わず座り込みそうになる膝を立たせて、すぐそこのダイニングへ逃げる。
背中を向けて、上がった息を整えて。
不思議と怒りは起こらなかった。
ザックスの行為に驚き、ただ、どうして…と頭が混乱する。
後ろから痛いほどに視線を感じるが、ザックスの方を見られない。
どんな顔をしていいのか分からない。
いつもなら強気な自分がどこかへ行ってしまった。
わけが分からなくて、頭がパニックを起こしていて。
後ろから近づいてくるザックスにも気づかなかった。
「クラウド…」
すぐ後ろから呼ばれた声に、びくっと肩を揺らす。
振り返ることも出来ずに、固まった。
「こっち向いて」
「………」
背中を向けたまま、俯いてしまう。
そんなこと言われても、振り向いてザックスの顔を見ることなんて出来なくて。
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