□■FF7
□苦手なもの。
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なぁ、本当にいいのか??ホンットー・・・ッに、いいのか??」
スクリーンに映し出され、今にも始まろうとしている映像を目の前にザックスは、今の自分に精一杯の平静を装ってそれを止めに入っていた。
「別に構わん」
「いいんじゃないの?一回くらい見てみても」
しかし、対するセフィロスとクラウドは全く取り合う様子も無く。
「予告って長いんだよね」
「あぁ、そうだな」
そんなことを言いながら、本編手前に入る他の映画予告という、10分ほどあった猶予の時間を容赦なく早送りしてくれる。
「や、オレ予告も見たいんだけどな!」
早送るな!巻き戻せ!と口にはせずとも内心慌てるザックスに
「えーもう送っちゃったし・・・面倒くさいから後にして」
「諦めろ」
一人は素で、もう一人は含みのある表情でそう言い放つ。
まだ早送りの途中であるにもかかわらず、後にしてという言葉どおりクラウドは予告を全て飛ばすつもりで早送りを続けた。
「〜〜〜っ」
ザックスは幽霊やお化けなどの類が大の苦手だった。
そのことを知っていたのは数多い友人の中でもセフィロスだけで。
だけ、ということは当然クラウドも知らなかったわけである。
テープが進むたび、本編が近づくにつれて隠そうとする努力もむなしく動揺をあらわにし始めたザックスに、
”もしかして・・・”
クラウドの中でそんな思いが湧き上がった。
あくまで知らないフリ、気付かないフリを通したのだけれど。
しかし、一度そう思ってみてみればそれは歴然としていて。
ザックスって、ポーカーフェイス得意じゃないんだな、とひそかに思ったのだった。
それが任務の絡んだ時――仕事であればそのポーカーフェイスも完璧だというのに。
一方、セフィロスはそんなザックスの様子を楽しんでいた。
ちょっと意味ありげにニヤリと笑うセフィロスは、横目でザックスを見ており、
対するザックスは何かの意志・・・というか思いっきり抗議の眼差しで無言のままセフィロスを睨んでいた。
そんなザックスの視線を受けて、セフィロスの笑みはかえってますます深くなる。
そういえば、ここに来るときセフィロスは「面白いものを見せてやろう」と耳打ちでクラウドにそう言って来た。
その時はなんだか分からず、だから先ほどまでは今まさに流れようとしている映画のことかと考えていたのだが・・・
・・・ちょっと違うかもしれない。
隣のザックスをちら、と見てそう思った。
予告も終わりスクリーンには”まもなく本編がはじまります”の文字。
ザックスの顔は、否応にも引き攣った。
そして本編が始まった途端、
「あ、オレちょっとトイレ言ってくる。先進めててくれて構わねぇから」
逃げた。
構わないというか、むしろとっとと進めてくれとトイレの方へ歩き去るザックスの背中に、
「そんな気を遣うな。別に構わん、待っててやるから行って来い」
いつになく優しいセリフのセフィロス。
しかし優しいセリフの割に、口調は有無を言わせない感じが漂っていて。
「お・・・おぅ、悪ぃな・・・」
クラウドの手前、怖いから俺が居ないうちにとっとと進めろ!などとは言えず、ザックスはありがた迷惑極まりないその言葉を、渋々受け取った。
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