□■FF7

□心影
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暗い部屋の中、電気も点けずにザックスはソファに沈み込むように座っていた。
時刻はもう真夜中、午前2時。
さすがにクラウドはもう眠っているだろう。

数日振りの帰宅。
本当は、日を跨がずとももっとはやくかえってくることは出来たのだが、昨日・・・いや感覚的には今日、まで続いた遠征――戦闘の嫌な高ぶりが収まらず、外で酒を飲んでいたのだった。

最近では目立って反乱を起こすものも少なくなった。
が、それでもまだ皆無ではない。
今はその残党勢力の掃討戦が主だ。

残党勢力とはいうが、しかし実際のところほとんどが女子供に老人ばかり。
この先の反乱の芽を摘むため、ということらしいがまともな抵抗すらできない者相手の戦闘は、むしろ戦闘ではなく、”虐殺”という気すらしてくる。


・・・事実、そうなのかもしれない。


本当に、胸クソ悪くなるような任務ばかり。
そして当然のように今回も。なんて、後味の悪い・・。
自分が人間でなくなっていくような錯覚すらしてくる。

できるものならこんな闘いはしたくなくて。
しかしそんな我侭が通るはずはなく、俺たちはあくまで神羅の駒。
そしてその駒の中でもソルジャーは他の神羅兵の上に立つ者。感情で動いていいはずがない。
それが許されるのは、自分の身一つである一般兵まで。


上のヤツらはいいだろう。
ただ上から見下ろし命令するだけで自らが動くことはないのだから。

こんなことをするために俺は、ソルジャーになったのか・・・?


結局部屋に帰ってからも、鬱々とした気分でどうにも寝付けず、ザックスは再び酒を煽っていた。
そうでもしないと、やっていられない。







・・・・・・







「・・・ザックス?帰ってたの?」


ふと、声がして。

戦闘で研ぎ澄まされたままの神経は、近づく気配に嫌でも気づいていた。
よく、知った気配。
驚きもせず声のした方へ視線をやれば、やはり電気のついた廊下からドアを開けてクラウドが姿を見せていた。
逆光で表情はよく分からない。


「あ・・・あぁ、ただいま」

「お帰り。・・・お疲れさま」

「おぅ。どうしたんだ?こんな時間に。寝てなかったのか?」


沈んだ気分を悟らせまいと、努めていつも通りの声音で話す。
さっきまでの自分を隠すように、なんでもなかったように。


「寝てたんだけど、なんか眼が覚めちゃったから。水でも飲もうと思って」


ザックスの言葉に答えながらも、どこかクラウドは不自然さを感じていた。
話し方も表情もいつもと変わりない。なにが、というわけではない。
分からないのに、なぜかザックスが―――


「ザックスこそどうしたんだよ、こんな暗い中で・・・」


―――泣いている気がして。

言いながら近づき、横まで来て、


「――ッ!?」


不意にザックスを抱きしめた。

クラウド自身、何故そんなことをしたのかよくわからない。
ただ、自然に体が動いた。

めったにないクラウドからの抱擁。普段のザックスならば、飛び上がって喜びたいほどの出来事なはず。
しかし、それにザックスは息を詰まらせたようにビクリと身を竦ませただけだった。

だが、それも一瞬のこと。
すぐに普段の表情になってクラウドを見上げる。


「・・・クラウド?珍しく積極的じゃないか。」

「・・・・・・」

「ハ、もしかしてクラウドから誘ってくれちゃったりなんかしたりして?」

にやり。
人の悪い笑みでフザけたセリフを口にする。

自分の中の弱い部分に気付かれたくなくて。
でも、クラウドのザックスを抱きしめる腕はそのまま。



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