□■FF7
□鬼の霍乱
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「あー…ちょっと飲みすぎたかも……」
若干覚束ない足元に内心苦笑して、そんなことを呟きながら兵舎にある自室への階段を上る。
2日間の短期遠征から帰ってきたザックスは、こちらに戻った時間がすでに夜中の2時を回っていたこともあり、
連れに誘われ部屋に帰ることなくそのまま飲みに行っていた。
翌日(というかもう今日だ)が休みなので時間を気にせず明け方まで飲み明かして。
部屋に戻る頃には東の空が明るみ、もうまもなく朝日が昇ろうとしていた。
ザックスが帰ってくる予定日の翌朝、クラウドは早朝訓練だといっていたからもう起きているかもしれないな。
そんなことを考えつつ、玄関を開ければ案の定。
眠そうな顔をしながらクラウドが出掛ける準備をしていた。
低血圧でなかなか脳が覚醒しないクラウドは、ザックスが帰ってきたことにも気づいていない様子でキッチンに立っていて。
「クラウドただいまーおはよー」
「っわ!…お、おかえり…って、ザックス酒臭い…」
パンでも焼いて食べたのだろう皿を洗っていたクラウドの背後から、
のし掛かるように抱きしめつつ帰宅と朝の挨拶を告げれば、びくっと身体を揺らして振り返って。
しかし驚いた表情は一瞬で、次の瞬間にはザックスの全身に纏うアルコールのにおいにその顔が顰められた。
「ん?あぁ、さっきまで連れと飲んでたからな」
「そうみたいだな。……お疲れさま」
明け方まで飲んでいたのだというザックスに、少し呆れたような顔で苦笑しながら労いの言葉を掛けると、
クラウドの身体に回されたザックスの腕がぎゅっと強くなって、それから離れた。
実は抱きしめたときにクラウドの髪からしたシャンプーの香りに、ちょっとムラっと来たりしたがそこはぐっと我慢だ。
朝だし。
クラウドはこれから出勤だし。
「ん。よし、ちょっと充電できた」
「…なんだそれ」
「まぁいっからいっから。――ところで今日は暇か?予定なかったらたまには二人でのんびりしようぜ?」
「…?うん、わかった。まっすぐ帰るから」
いいから、と濁すザックスに少し腑に落ちないような顔になりつつ、それでもそのあとに続いた言葉に内心嬉しくなって。
一緒に住んでいるにも関わらず、最近仕事の具合でなかなかゆっくり顔を合わせる時間がなかったから。
微笑むように頷けば、おう、とザックスの嬉しそうな満足そうな返事が返ってきた。
「じゃあ、そろそろ行ってくるよ」
「おぉ、がんばってこいよー」
行ってきます、と出掛けていくクラウドを見送って、ザックスは遠征から戻ってそのままだった体を洗い流そうと、
ゆるゆると襲ってきた眠気にあくびをしつつ風呂場へ向かった。
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