□■FF7
□April shower
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「ただいまー…」
「おーおかえりーー」
訓練が終わって部屋へ戻ったクラウドが帰宅を告げると、リビングからザックスの間延びしたような眠そうな返事が返ってきた。
その声に、そういえば今日はザックスは休みだったなと思い出す。
――どうでもいいけど気持ち悪い…。
クラウドは自分の姿を見下ろして溜息をついた。
訓練中突然の夕立に見舞われて、けれど戦闘訓練が中断なんてされるわけもなく、"どしゃぶり"というにふさわしい雨にみんなして見事にずぶぬれになった。
訓練場にはもちろんシャワー室もあるのだけど、そんな状況で人がいっぱいだったのでそのまま帰ってきて、今に至る。
見下ろしたついでに見えた玄関の床は、自分からポタポタと落ちる水滴でしっかり濡れていて。
このまま上がれば間違いなく廊下も濡れてしまう。
「あのーザックス…?」
どうしたもんかな、と少し考えたがやっぱりザックスに頼もうともう一度リビングに向かって声をあげた。
「なにー?」
「悪いんだけどタオル持ってきてくれないか?」
その言葉にザックスは玄関に出て来て、
「どうしたん……おわ、すげぇな、ちょっと待ってろよ」
クラウドの姿を見るなり一歩下がって驚く、若干のオーバーリアクションを見せながら洗面所に消えた。
「訓練中に夕立に降られて…」
「あーそういえば、さっき雨降ったような…そりゃ災難だったなぁ。ほら、」
「ありがと、ぅわっ…ちょ、」
まもなくタオルを持って戻ってきたザックスは、理由を聞いて苦笑すると有無を言わさずクラウドの頭と髪を拭きはじめる。
まったくコイツは…本人自覚も無しにそんな色気振り撒いて、ノンケの奴が間違ってそっちに目覚めたりしたらどーすんだ…。
ただでさえ、軍隊なんて女なんて幹部に少ししかいない男所帯だってのに。
…あ、タークスは女いるな。
とかなんとか、クラウドの思いもよらないところに思考を巡らすザックスは、聞こえた小さな抗議をスルーしてひとしきり拭き終えタオルを取る。
「………」
…それはそれで目に毒だった。
もう滴り落ちるほどではないが、今だ湿り気を帯びた髪が無造作に顔に掛かっているのがなんとも言えず。
「…よし。服は一旦外で絞るからここで脱いどけな。んでそのままシャワー浴びてこい」
しかしそんなことはおくびにも出さず、そう言って。
「あ、うん、ありがと」
「おぅ」
言って上着を脱ぎ始める。
が。
「……」
「どうした?」
「…いや、じっとこっち見るな」
「…気にすんなって!ほら、早く脱いじゃえよ」
眇めた眼でじとっと見返せば、一瞬の間の後イイ笑顔でそう急かされた。
確かに、男同士なのだし気にするところではないのかもしれないが。
だがしかし目の前の男は自分を女性と同じ、そういう対象としてみれるわけで。
ていうか、なにその間。
「………」
なんとなく、くるりと横を向いて下着を残して服を脱ぎ終える。
「はい、あと適当に絞っとくから」
「あ、じゃあ…お願いします」
差し出されたザックスの手に脱いだ服を渡して、受け取ったタオルで足だけ拭くとそそくさと風呂場へ逃げた。
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