□■HANAKISOU

□夢と現実と策略と
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「それじゃ黒鷹、今まで世話になった」

「じゃあね、それなりに元気でやりなよ。玄冬は僕がちゃんと幸せにするからさ」
 
「……は?」
 

唐突に目の前の二人から言われた言葉と、状況についていけずあっけに取られて聞き返す。

これはまるで自分を置いてどこかに行ってしまう様な流れではないか。
それも『ちょっと行って来る』ではなくもう帰ってこないような――。

が、当の本人たちは、「違うだろう?俺が花白を幸せにするんだ」などと戸惑うこちらを完全に無視して、なんだか妙に甘い空気を作り出している。

 
「うん、じゃあ二人で幸せになろうね、玄冬」
 
「あぁ」
 

なんて。…なんなのだ、この果てしない”蚊帳の外”感は。

 
「ちょ、ちょっと待ちたまえよ君たち。一体何の話をしているんだ、私にはさっぱり分からないぞ!!」
 

私にも分かるように説明してくれと喚けば、今度は玄冬と花白があっけに取られたような顔をして、さらには何を言ってるんだコイツは、という視線が向けられる。
 

「黒鷹、お前……」
 
「…………」
 

先ほどの甘い空気はどこへと言いたくなる程に、『呆れた』と如実に語るじとっとした目と、やはり呆れた声音。
 

「今更往生際が悪いぞ、黒鷹。いい加減に子離れしたらどうだ」
 

あげくにやれやれと嘆息された。なんという扱い。
 

「な、なぜそんな冷たい目で見るのだ!だから言っているだろう、本当にわからないんだ!」
 
「?」
 

必死な黒鷹に、玄冬が不思議そうな顔をする。
 

「……ね、玄冬。もしかして冗談に取られてたりするのかな?」
 
「…あー…」
 

どうにも話が通じていない様子の黒鷹に、花白がこそこそと玄冬へ耳打ちすれば、その内容に玄冬の表情が微妙な感じに歪められて。
でもなぁ、などとひとしきりこそこそと話していた顔を上げ、黒鷹に向き直った。
 

「黒鷹、一応これでお前に言うのは二度目になるのだが…」
 
「な、なんだい」
 

妙に真面目な、真剣な玄冬に気圧されて思わずどもる。
 

「冗談じゃないからちゃんと聞いてくれ」
 
「………あ、あぁ」
 

なんだろう、この嫌な予感は。というか、先の会話から嫌な予感はひしひしとしているのだが、これは、本格的に――……。
 







「俺は花白と結婚することにした」



「なにィーーーーーッッッ!!!」




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