□■GIFT
□one decade
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「ん……」
ふわりと、微睡みの中から意識が浮上した。
くすぐったいような心地よいような微妙な刺激は、どこか懐かしい。
室内の明るさを嫌って、瞼は閉じたまま。
側にある温もりが誰のものかは、見なくても分かる。
柔らかな目覚めに満足したクラウドは、小さく口許を綻ばせて、その温かい身体にすり寄った。
「おはよ」
ザックスが髪を撫でるに任せて、またとろとろと二度寝に入ろうとしたのだが、耳元でくすりと笑われて諦めた。
「ん〜〜〜〜」
ブランケットの中で伸びをして、不機嫌そうに目を開ける。寝室はブラインドから洩れてくる光のせいで、かなり明るい。
「何時?」
「もうそろそろ9時になる」
相変わらず髪を撫でる手をとめずに、ザックスが答えた。
寝たりないような気持ちになるのは、身体が疲れているせいだ。だから、そのまま温かい手の感触に甘えて、ぼそりとぼやく。
「起きたくない…」
「なら、ゴロゴロしてたら?」
「そうする……」
手が離れてしまうのを残念に思いながらも引き留めはせず、ザックスが起き上がるのを横目で見ているクラウドである。
一旦はベッドから降りようとしたザックスだが、身体をひねって覆いかぶさってくると、
「あ、そうだ。誕生日、おめでとう」
そう言って、軽いキスを落としてきた。
「それ、昨晩も聞いた」
その言葉に、ついうっかり喜びを隠しきれずにいたばかりに、朝っぱらからこんなに疲れる結果になった。別に嫌だったわけでもないのに、不機嫌そうな声を出すのはクラウドの悪い癖だ。どの道、それぐらいのことを気にするような相手でもないので、直す気はさらさらないが。
「ま、いいじゃん?何度でも言わせてくれよ」
案の定、気に留めた様子もなく、さも嬉しそうな笑顔を見せて立ち上がるザックスである。
「なんか、お腹空いた…」
「へぇ。お前が起き抜けで腹が減ってるなんて珍しいな。やっぱ、昨日、運動したから?」
「………うるさい」
妙な動きをするザックスの腰めがけて枕でも投げつけてやろうとしたのだが、それよりも面白いことを思いついて手を止めた。
「朝飯、今すぐ食べる」
「シャワーぐらい使わせてくんねぇかな。いや、ちゃんと作るけどさ」
「後にしろ。昨日はあんたの言うこときいてやったんだからな」
横柄に言ったつもりなのに、頬が熱くなったのが自分でも分かる。昨夜なにをしたのか、あやふやにしてしまうには、まだ記憶が新鮮すぎる
のだ。それが恥ずかしくて、クラウドは返事も聞かずにブランケットの中に潜り込んだ。
「しょうがねぇなぁ、ちょっと待ってろ」
色々な面で敏い男は、クラウドの理不尽な要求が甘えであることに気付いたらしい。笑んだ声音とキスとを寄越してから、部屋を出ていった。
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