駄文2〜グラビonly〜

□It Is On My Side 1
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「古賀さん到着されました」

誰かの声で、オレは入口を見た。
そこにいたのは、まさしく古賀成美だった。

「すいません、遅くなりました!」

「こちらこそ、急にすいません」

監督は頭を下げて謝った。
古賀さんは、オレに気付くと寄ってきた。

「新堂さん、はじめまして!古賀成美です。今回はよろしくね」

大人な女。
彼女はそんな香りを漂わせていた。

「新堂愁一です。よろしくお願いします」

オレは20歳。
彼女は確か24歳。

「遅くなってごめんなさいね。主人が朝は苦手で、起こしてたら、遅くなってしまったのよ」

由貴が朝が苦手なのは、オレも知ってる。
一度寝たら、なかなか起きない。
でも寝顔は世界一だ。

「いいんですよ。…幸せなご家庭のようですね」

「ええ、おかげさまで!お互い仕事が忙しいけれど…。この前は瑛里がお世話になったみたいね?」

え…?

「泊まったんでしょ?」

「え、はい…」

どういう泊まったって意味?
オレ達の関係を…?

「仕事でも、人のお宅に泊まることなんて無かったのに。新堂さんのこと…弟のように思っているのかも」

ニコニコと彼女は言った。
ああ…きっと知らないんだ。
オレが由貴に抱かれてることも…、由貴がオレを抱いてることも。
ホッとしたような。
知れば良かったのにと言うような、中途半端な気持ち。

「これからヨロシクネ」

再び、挨拶をされ…右手を差し出された。
この人は、悪い人じゃない。
直感で分かる。

「こちらこそ」

オレはその手を握り返した。
にこやかに…。
オレって、なんて最低なヤツなんだろう?
だけど、由貴からは離れたくない。
そんな気持ちを胸の奥に刻み込んだ一日となった。



 
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