駄文2〜グラビonly〜
□手にできるのは天才のみ
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「兄貴ィ〜」
「ああ?」
「兄貴は良いよなぁ」
樹把は愁一の出ている、歌番組を見て呟いた。
その表情は、ふて腐れた子供のようだ。
「…意味がわからん」
「ぇえ〜わかんないの?!今の愁チャンのファンが聞いたら、兄貴殺されるぜっ」
瑛里は対面式キッチンから、テレビと弟を睨んだ。
「だってさぁ〜、一般人のファンは『新堂愁一』が欲しくてたまんないのに!その『新堂愁一』は兄貴一人のもんだろぉ〜?」
樹把は床にゴロゴロと転がりながら、視線をもう一度テレビに戻した。
愁一の歌声が、部屋中に広がる。
『やっぱ歌うまいなぁ』なんて、樹把は個人的な感想を述べ、『コレ、先週出した新曲じゃん』と一人呟く。
「……俺だけのもんには…なれねぇよ…」
「え?なんで?」
テレビに夢中だったはずだが、その瑛里の言葉を樹把が聞き逃すはずがなかった。
「なんで?どーいう意味だよ、兄貴?」
「うるせー、…ほら飯だ。食ったら、皿片付けてから帰れよ」
瑛里はお盆に乗せた、即席チャーハンと卵スープを渡した。
「あ、兄貴!逃げんのかよっ」
「逃げる?ばか、仕事だ。どっかのクソガキみたいに騒がしくすんなよ」
そう言うと、後ろ手にヒラヒラと手を振った。
そして、その姿は静かに書斎へと消えたのだった。