駄文〜グラビ・テニプリ〜
□未決定
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「藤崎、泊まりにくるか?」
事の発端は、そんな新堂さんの一言から始まった。
その日、僕は家の鍵を忘れてしまって帰れない状況にあった。
管理人さんに声を掛けても良かったのだが、現在午前1時。
叩き起こすには気が引ける。
仕方なく事務所に泊まると言ったところだったのだ。
「でも、瑛里さんに悪いですし…」
「大丈夫だって!」
「そうそう。由貴さんだって、そこまで冷たくないだろ」
中野さん…僕が新堂さんを好きだと知ってるクセに。
ワザとそんなことを言うんだ。
中野さんって、新堂さん以外には以外と冷たい。
「藤崎、帰ろうぜ。お前、瀬口さんの従兄弟だろ?なら、由貴も許すって♪」
新堂さんは笑顔で僕の腕を引いた。
それだけなのに…ドキドキしてしまうんだ。
パッと中野さんを見ると、にこやかに手を振るだけ。
あの笑顔には、裏がありそうだな…。
「ただいまぁ〜!」
「お邪魔します」
部屋に上がるのに気が引けた。
瑛里さんは留守なんだろうか?
「藤崎、まずオレの部屋に荷物置いて」
案内された部屋に荷物を置く。
当たりを見回しても机とパソコン、ベッドだけだ。
「……」
「どうかしたか?」
「……いえ、以外と綺麗だなって思って」
不自然に綺麗だった。
不自然にベッドだけが…。
机やパソコンの上は、散らかり放題散らかってる。
「ああ、多分由貴が時々、掃除機かけてくれてるみたいだから」
「ベッド…」
「え?」
「瑛里さんはベッドメイキングが好きなんですか?ベッドだけは、とても綺麗になってるから」
「ああ〜」
新堂さんは顔を赤らめた。
「オレのベッドでは、あんまり寝ないんだ…よね。……ま、いいじゃんそんな事!腹減ったな」
新堂さんは急ぎ足で部屋を出て行った。
「瑛里さん留守ですか?」
「キッチンじゃねぇ?」
僕達はキッチンのあるリビングに行った。
ドアを開けると、ガーリックの香ばしい匂い。
そして、フライパンをカチャカチャと扱う音。
確かに、瑛里さんは留守ではなかった。
「ただいまぁ〜由貴!!」
新堂さんは対面式になったシステムキッチン越しに、瑛里へと飛び立った。
「あ、あっぶねぇーだろうが!!それにキッチンには侵入するなって言ってるだろうが!!」
「だってぇ〜」
「放せ!!料理してん……誰かと思えば、藤崎順クンじゃねぇか」
新堂さんを荒く扱っていた足を止め、僕を見た。
「どうも…お久しぶりです」
「由貴、藤崎が今日泊まるから」
新堂さんが悪びれもなく言った。
瑛里さんの顔が強張る。
「飯は?」
「オレも藤崎も、まだ♪」
「泊まりにくるなら早く言えよ。お前の分しか作ってねぇ」
瑛里さんが…料理するんだ。
あまりに意外で…って、新堂さんが料理しても…爆発しそう。
「今日はバジリコスパゲッティーだから、お前の分を分けて2人で食えよ」
「はーい。藤崎、半分で我慢な?」
「あ、大丈夫です」
「ごちそうさまでしたぁ」
「美味しかったです」
「だろ〜?由貴は一流シェフみたいだろ?」
瑛里さんは読んでいた本を閉じると、僕達の空になった皿を重ねて片付け出した。
何か、新堂さんの方が亭主関白みたいだ。
「食べ終わったなら、早く風呂は入れ」
「は〜い。藤崎、一緒に入ろうゼッ」
「え!?」
僕は一気に顔が熱くなるのを感じた。
だって、新堂さんの裸が…裸が見れる!?
いやいや!
僕は何て想像を!
でも、一緒に入ることを瑛里さんが許すはず…
「どうでもイイから、さっと入っちまえよ」
許した。
……瑛里さんは知ってる。
会社で会ったとき…『お前のアイツを見る目は、男の眼差しだからだ』と言われたことがあった。
瑛里さんは知ってるんだ。
気付いている。
なのに、彼と一緒の入浴を進めてる。
これは以前と同様に、余裕があるからか。
「いいですよ。一緒に入りましょう」
僕に度胸がないと思ったら大違いだ。
「よっしゃ!男は裸の付き合いだゼッ!じゃ、着替えは取ってくる!藤崎、オレの貸してやるから、待っててな」
あ、もしかして、下着も新堂さんの借りれるのかな?
新堂さんは、走ってリビングを出ていった。
「……いいんですか?」
「あ?」
「お風呂ですよ」
「……お前こそ、大丈夫かよ?」
「なっ、何で僕が!?」
「いや」
そう笑いをこらえて、瑛里さんはソファーに座った。
「風呂は突き当たりにある」