駄文〜グラビ・テニプリ〜

□マジになれ
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深夜2時のバー。

「あれ〜?あれれ〜ユキエイリなのだぁ!」

一人で遊びに来ていた佐久間竜一は、バーの隅で見知らぬ女と飲む、由貴瑛里を発見した。

「むむ!ユキは何をしてるのだ?」

竜一は左手に持ったクマゴロウに聞いた。

「うん!…ふむふむ…わかったゾ、クマゴロウ!ユキはウワキをしてるんだな?シューイチが可哀想なのだぁ…シューイチはやっぱりオレとコイビトになった方がHAPPY・HAPPYに違いないのだ!」





 

 
♪〜♪〜

「アラ、瑛里…携帯鳴ってるわよ?」

「…ああ、いいんだよ」

聞き慣れた着信メロディー。
瑛里はディスプレイを見ることもなく、電話の向こうの相手を想像した。

「愁一からなんでしょ?電話」

「……」

「何よ?」

瑛里は眉間のシワを深くして女を見た。

「いや…」

瑛里は気に入らなかったのだ。
女が自分の恋人を『愁一』と言ったことが。
普段なら気にならなかったかも知れない。
だが喧嘩した直後なら、どんな些細なことでも恋人関係なら見逃せないのだ。

「こら〜〜!ユキエイリ!!」

「!?」

後ろから現れた竜一にカクテルを吹き出しそうになった瑛里は、驚きを隠せないようだった。

「ユキエイリ、これはウワキだな!ウワキなのだ!!」

「さ、佐久間竜一じゃない!瑛里、紹介してよ」

女が瑛里に寄り添う。

「ユキエイリ!オレは決心したゾ!」

「何をだ?」

「愁一をお嫁さんにするんだ!」

「ブッー…ゲホッ、ゲホッ」

瑛里は次こそは、カクテルを吹き出した。

「ちょ、瑛里汚いわよ」

女がハンカチで、瑛里の口元を拭った。
瑛里は頭痛を酷く感じる。
頭痛を感じるのだが、愁一を取られる心配なんてサラサラない。
「ユキエイリ!オレは絶対にシューイチをお嫁さんにもらうゾ!ギャグあつ愛なのだ!」

「「ギャグあつ愛??」」

「それを言うなら、逆奪愛だろ?」

瑛里が冷静に突っ込みを入れた瞬間…

♪〜♪〜

ニトルグラスパーの曲が、バーのBGMで流れ出した。

「はぁ…俺は帰る」

瑛里は疲れ切った頭を支えて立ち上がった。
帰るつもりなんか、まったくないが、このまま竜一に捕まる気もないのだ。
かと言って、愁一の待つ家に帰るのも腹立たしい。
瑛里は別な店で飲み直すことを考えながら、荷物をまとめだしたのだった。

「…待てよ…」

「あ?」

瑛里が竜一を見ると、そこにいたのは、ニトルグラスパーの佐久間竜一だった。

「オレ、マジだぜ?ユキせんせー?」

「………そうか」

瑛里は先ほどにはなかった不安が湧き上がる。
冷静を装っても、瑛里自身なら分かる。

「愁一を奪うよ?オレなら愁一だけを見てやれるぜ」
「……瑛里、何か言いなさいよ」

見かねた女が瑛里に詰め寄った。

「……」

瑛里は何も言わない。
言えないのかも知れない。
瑛里は考えた。
あの幼い佐久間竜一なら、自分の方が良いだろう。
だが…今目の前にいる佐久間竜一なら…愁一を奪われるかもしれないと。
瑛里の頭痛は酷くなる一方だ。

「今は頭が痛い…帰る」

今は考えることさえ億劫だ。
帰ろ…愁一が待つ家に。先ほどとは違う考えに至った瑛里は、再び背中を向けて歩き出す。

「逃げんのかよ?」

「っ……」

「もっかい言ってやるよ、ユキエイリ」

背を向けていた瑛里に、竜一が追いつき、バーのマスターがいるカウンターにお金を置いた。

「オレはマジだぜ、アンタもマジになれよ」

不適な笑みを浮かべて、店を出る。

「お客様!お釣りを…」

「いらねぇよ。もらっといて」

「あ、ありがとうございます」

マスターが頭を下げると、もうそこには竜一はいなかった。

「くそっ…何なんだってんだ」

瑛里は手荒くコートを着ると、竜一と同じように勘定をカウンターに置いて出て行った。
瑛里の帰る先は、家で大泣き中の愁一の元に決定したらしい。



END...
 

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