駄文〜グラビ・テニプリ〜
□大事なこと
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『あんた、新堂愁一?』
そう言われて普通に頷いたのは、芸能人として失格だったと、今更ながらにオレは思った。
「あんたねぇ…ムカつくのよ!」
オレより少しばかり背が高い女は、オレの胸ぐらを掴んで言った。
もちろんオレには、見覚えなどない顔だ。
『ムカつく』なんて言われる覚えも、全くない。
あるとするば…恋人の由貴瑛里絡みだと思う。
「放せよっ」
オレも男だから、力的には、オレだって、この人に勝てる自信があった。
けど、何であれ、女の子に手を出すなど、オレには出来ない。
「苦しいって!」
いい加減、息も苦しくなってきた。
少し強く言ってみると、その人は泣いた。
「私は…私は…。瑛里を愛してるの!そして瑛里も私を愛してるわ!」
「へ?」
あまりの言いぐさにオレは間抜けな声を上げた。
「私たちは愛し合ってたのに、それをアンタが!!」
オレの表情に更にイライラしたのか、女はオレを叩こうと手のひらを高く上げた。
オレは予想できる痛みに目をギュッと閉じた。
「……あれ?」
いくら待っても来ない衝撃に、オレは片目を開いた。