駄文〜ナルト〜
□名の無い感情
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月も沈みかけた朝方。
シーツにくるまり、ゴロゴロとしていたのは奈良シカマルだった。
「……帰んの?」
「ああ」
ベッドサイドに腰掛けて、タバコの煙を思いっ切り吐き出したのは、猿飛アスマ。
シーツから見えている細く白い足をアスマは名残惜し気に撫でた。
けれども、シカマルはその行為を拒否するようにシーツの中に足を引っ込める。
「もう朝になるから、泊まってけば良いのに」
シカマルはアスマとは逆の方向を見たまま、呟いた。
それは独り言のようで、けれどアスマを引き止める言葉であった。
「……いや、帰る。家族が待ってるからな」
「……そ」
さっきまで、あんな行為をしていたのに、『家族が待ってる』なんてよく言えたもんだと、シカマルは呆れる。
「じゃぁな」
アスマは立ち上がると、寝ていたシカマルの髪にキスを1つ落として、部屋を出て行った。
「……めんどくせぇ」
口癖の台詞を吐いてみても、この気持ちは収まらない。
アスマは、紅と結婚していた。
子供が出来たから仕方なく…と、言う感じでもない。
シカマルがアカデミーを卒業する以前から、つまりアスマと出会う前から、アスマと紅はそう言う関係だったらしい。
恋人ではなく、大人の割り切った関係。
「不倫…めんどくせぇ」
本日2度目のめんどくせぇ。
けれど本当に面倒なのは、自分とアスマの関係ではなく、自分自身の感情であった。