駄文〜グラビ・テニプリ〜

□伝えない想い
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「新堂さん。今日は何が原因ですか?」
仕事がやっと片づき、僕は足早に帰ってしまった中野さんの代役に努めていた。
「………」
「黙ってても…大体の察しは付きますよ」
それでも新堂さんは黙ったままだ。
「瑛里さんと喧嘩でもなさったんですか?」
「……浮気」
「え」
「由貴が浮気してた」
新堂さんは、思い出したように目に涙を滲ませた。
「瑛里さんの浮気なんて今に始まった事じゃないでしょう?」
「俺と彼女のどっちが大切なんだって聞いたら、そんな事に一々答えてる程暇じゃないって言ったんだ!」
僕はため息を吐く。
「俺は由貴だけなのに、由貴は違うんだ…」
泣き出した新堂さんは止まらない。
それをどうしたら良いかも僕には分からなかった。
もし、自分が由貴瑛里だったら、彼をこんなふうに泣かせる事はしないのに。
「新堂さん…僕、」
「おい。クソガキ」
突然、後ろから声を掛けて来たのは、紛れもなく由貴瑛里だった。
「由貴…」
「ったく世話かかせやがって。帰るぞ」
瑛里さんは新堂さんの手を握り、引っ張った。
「何だよ!彼女はどうしたんだよ!」
「バカかお前?少しは自分に自信持て。アホ」
さっきまで泣いていた顔が一気に赤く染まった。
「さっさと来い」
新堂さんは恥ずかしさで俯いたまま、瑛里さんに腕を引かれた。
すると瑛里さんの目にようやく僕が停まったようで、僕の事をジッと見ていた。
「愁一、お前先に車に乗ってろ」
「えっ…由貴は?」
「直ぐに行く」
「分かった。じゃぁ先に行ってるな?藤崎、また明日!」
にこやかに笑い、手を振る彼は僕が大好きな彼だった。
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