駄文〜グラビ・テニプリ〜
□君がいて…
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「愁一。あんた、いい加減に身をかためなさいよ」
それは愁一にとって予想外な言葉だった。
「は?母さん俺、恋人いるんだけど」
久しぶりに実家に帰った愁一は、母親におそるおそる告げた。
愁一には恋人がいる。
それはこの母親も承知の事だったはずだ。
「由貴先生でしょ?でもね、愁一。あんたは男で由貴先生も男なのよ。いつまでたっても結婚は愚か、孫の姿だって見れないじゃない」
確かにその通りだった。
わざわざ言い返す言葉も見つからない。
愁一は黙った。
「あんたもずっと若いままじゃないのよ?来月はヒロ君も結婚するし。現実問題で考えなさい。いくら好きでも限界があるわよ。男女同士と男同士じゃ全く違うわ」
愁一は黙ったまま母親の話しを聞いた。
「…………孫の顔くらい見たいわよ」
最後の母親からの台詞はそれだった。
その言葉は酷く愁一を貫いた。
自分達が好き合っていても、絶対にそれだけは叶わない願い。
そんな事、瑛里も愁一自身も改めて話をしなくとも解っていた。
子供も出来なければ、結婚なんて夢のまた夢。
考えなかった訳じゃない。
ただ考えたくなかったのだ。
「ごめん、母さん。ごめん」
愁一は帰り際に玄関で、そう呟いた。