小説

□『七夕の日は、だいたい雨D』
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全てを鮮明に思い出し
目をあけた高杉は銀時を見る。
銀時は苦笑いしてそれを受けた。


『確か…あの時もここに来たなァ…』


高杉は
攘夷戦争時代のことも思い出したのか
それを確認するように
銀時に話をふる。


『あぁ、あん時は曇天でよ、
帰りに辰馬がすっころんで
泥まみれになりやがったんだよな〜』


その姿を思い出し
本当に可笑しいのか
ケラケラ笑う銀時を
高杉は静かに見ていた。
先ほどまで殺気は感じられない。

高杉自身それに戸惑い、驚いた。
自分の中にあった
何かしろの淡い期待は
これだったのかと素直に思った。

ここを鬼兵隊の隠れ家にしたのも
ここに来るときは何となく
三味線を持ってきてしまうのも
ここで七夕が
終わるまで何故か居てしまうのも
思い出は忘れてしまっていたが
何かしろ自身に引っかかっていた
あの淡い期待がそうさせたのだ。

無意識に三人を待ってしまっていた。

まだそんな感情があったのかと
高杉は自分を笑った。
全てをぶっ壊すと世界を敵にまわし
共に戦った銀時と桂にも刀を向けた。
そんな自分がまだ捨てきれない何か。



***
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