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□なみだを隠すように
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4.なみだを隠すように、



どうして、きみが。
震える声が、ひどく拙くて切なくて、壊してしまいたい。
こんなこと、どうして。
どうしてだなんて、分かり切っているくせに。
その瞳は何もかも、自分の全てを浮き彫りにしてしまうくせに。
わざわざ問いかけてくるのは、ああ。彼も。
・・・思考が追い付いていないのか。
どうして、焔緋・・・!
絞り出すような、切なる声。
愛しくて、憎らしい。
泣くのを我慢しているのは、怒りからか絶望からか。
(泣いてしまいたいのはこっちだというのに?)
・・・ただの、戯れよ。
ぽろりと彼の瞳から雫があふれだすのと反対に、己の口元は歪んだ弧を描いた。


おしまい。

涙を隠すように笑って、歪んでしまう人もいると思うのです。

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