「好きだよ」
唇をかみしめながら言う言葉ではないだろうに、と。
彼の細い手首をシーツに縫い付けたまま白銀はおぼろげに思う。
好きだというなら、どうして。
そんなふうに、何かを堪えたようにいうのか。
「あきらくん」
背けた顔を前髪が覆い隠して、彼の表情が分からない。
こっちを向いてくださいと、囁いても。
いやだ、と突っぱねられる。
言動と行動がちぐはぐだ。
白銀が小さく息をつくと、ぴくりと体が揺れる。
「白銀、」
「・・・はい」
そして彼はまた繰り返すのだ。
好きだよ。
お前が、好きだよ。
彼の真意が分からなくて、白銀は途方に暮れたようにただどうしてと思うばかりで。
ワタシはちゃんと君が好きなんですと、気持ちを教えるように。
昶くん、と呼びかけて好きだと嘯くその唇を優しくふさいだ。
あなたが好きだと言ったのは、あなたを困らせたかったから
(そして僕でいっぱいになってほしかったの)
おしまい。
白銀→←昶みたいに、相反していく白昶も大好きです。
お題>>31D(サイダー)(http://chu.futene.net/31d/)