『笑顔の配達人』本編
□第三話『富川の苦悩』
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―高2の6月3日―
その日は朝から雨が強く降っていた。
登校するだけで靴や靴下がびしょびしょに濡れてしまう程だ。
教室へ入ると、何か違和感を感じた。
いつも俺より先に登校してるはずの富川の姿がないのだ。
ふと制服のブレザーのポケットに入っている携帯を見た。
富川からメールが来ている。
『河西っ…今日遅刻して行くから先生に言っといてくれ。わるいな。』
その日、富川が学校へ来る事はなかった。
次の日の朝、今日も朝から雨が降っている。
教室に入ると今日は違和感を感じない。
いつもの席に富川がいて、俺を見つけると「おはよー」と手を振ってくる。
「河西っ!おはよーっ。昨日は悪かったな〜。」
「あぁ、おはよ。で、昨日どうしたんだよ?」
「ちょっとな…。」
―――――――
その日の放課後、富川が何気なく話し始めた。
「俺の妹さ、小さい頃から心臓の病気なんだ。」
「……………。」