‥◆anniversaire◆‥

□広寒宮府
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「なんでこんなところにいんの?」

「さぁ。なんでだろう?」


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 喉の渇きを癒すため階下へ降りると、それを待っていたとばかりに買い物を頼まれた。
 普段ならこの寒い夜陰に出ていくのは断乎として拒否するところなのだが、そろそろ教科書との睨み合いに飽きてきていたから、気分転換も兼ねて近所のコンビニまで行くことを承諾した。
 雲と戯れる月が闇夜を切り裂く爪痕のように鋭く、背中にぞくりとした刺激を感じて余計に体温を低下させる。
 頼まれたものと、きれていたことを思い出したシャープペンの芯を手にコンビニを出た自分を待っていたのは、羽織ったダークグレーのコートのポケットに両手を突っ込み、いかにも寒そうに首をすぼめている男だった。
 トッグルの留められていない隙間から覗く白い制服。
 その白がコンビニのネオンと同化しそうなのを目に入れ、その男が誰かを認識する。
 ポケットから抜いた右手が親しげに振られたが、そんなものはどうでもよくて。

「なんでこんなところにいんの?」
「なんでだと思う?」
「今日は友達の家でテスト勉強って言ってなかったっけ?」
「そんなこと言ってた?」
「断ってきたの?すっぽかしてきたの?」
「どっちだと思う?」

 返答になっていないのはわざとだろうが、それは癇に障ることなく滑り落ちていく。
 寒さは知覚神経までも麻痺させつつあるらしい。

「これは19センチの差を縮めるため?」

 いつの間にか手元の袋を覗き込み、中のものを探っていた手が掴み上げたのは1リットルの牛乳パック。

「テニスに身長は絶対的に必要なものではないんじゃない?」

 期待していたであろう答えから故意に逸らしたのはほんの仕返し。
 困ったような苦い笑みを浮かべるそこへ、自分の首から引き抜いたマフラーを投げて。

「送ってくれるんでしょ?」


  +Fin+


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 千石清純誕生日記念物として書いたものです。
 リョ千っぽいけど、千リョです。
 セリフを全て疑問形、というのをやりたいと思ったらこんなことになりました。
 腹黒い駆け引きっぽくならないのは千石の人柄ってことで。

 

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