‥◆anniversaire◆‥
□小包爆弾
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「これ…?」
突然立ち止まり目の前に出されたものを、半信半疑で眺める。
「いらないならいいよ」
「えっ、待って!いるいるいるっ!」
差し出されていたものがバッグへ戻りそうになるのを慌てて止めて引ったくり、大袈裟なくらいに抱え込んだ。
その行動を無言で一瞥した少年は再び歩きだす。
すぐに追いついて横に並ぶと、大事に手に乗せたものから視線を移動させ。
「これってチョコ?」
「さぁ?爆弾かもね」
「開けていい?」
「爆発しても知らないよ」
「大丈夫だよ。知ってるでしょ?運は良い方なんだ」
素っ気なく返る言葉に笑いながら、自他共に認める事実を再認識させる。
足を止め、急く気持ちを抑えて丁寧に真っ赤なリボンを外し、綺麗に包まれた薄い水色の紙を取る。
出てきたのは白い箱。
まさかとは思うが、そっと蓋を開けた。
箱の中には一口大ほどのトリュフが4個。
「…これって、手作り?」
「従姉のね」
「ラッピングは?」
「従姉」
「リボン選んだのは?」
「……」
「憶えてたんだ」
「…あれだけしつこく言われればね」
―――射手座の今週のラッキーアイテムは赤いリボンなんだ
月曜日に会った時、催促としか思えないほどに強調していたそれを、聞いてない素振りできちんと憶えていたらしい。
「今食べたら怒る?」
人気がないとはいえ、ここは道路。一応確認をとるが。
「別に。ダメって言っても食べるんでしょ」
「いただきます」
許可を得て、嬉々として粉の塗された茶色のボールを口へ運ぶ。
ココアパウダーの苦味とミルクチョコレートの甘味。
少し大きめのそれを口の中で転がす。弱く歯をたてると、口内の熱で柔らかくなったボールは簡単に崩れ、とろりとした感触が舌の上で広がった。
「あ」
「なに」
「やっぱり爆弾だ」
「まずいって言いたいわけ?」
不機嫌に眉根が寄せられる。
「心臓が、止まる」
美味しすぎて。
嬉しすぎて。
「……は?」
不機嫌な瞳が不審気なものに変わった。
「後遺症がのこるかも」
美味しすぎて。
嬉しすぎて。
愛しすぎて。
「…なにそれ」
呆れて見てくる大きな瞳。
「そういう場合、加害者が責任とってくれるんだよね?」
茶色の粉のついた指先をぺろりと舐めて、被害者の男は微笑んだ。
+Fin+
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バレンタイン合わせで書いた千リョです。
なんでこのCPで書いたのか、さっぱり思い出せません。塚不二サイトだったのに。
今考えると、塚不二の次に好きだったのかもしれません、このCP。
あ、因みに。
『射手座の今週のラッキーアイテム』は実際に某雑誌の占いに載っていたものです。