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□存在
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ねぇ、
ボクの声は聴こえてる?
姿は?
見えてる?
君はちゃんとそこにいてくれてる?
君の中に
まだボクは存在している?
示さなきゃ。
ボクの声を
姿を
心を
歌を
命 を 。
「…アッシュ、変な顔になってるよ〜…?」
「わぁ!」
いつもの昼下がりのこと、ぽかーんと口を開けて窓から空を見上げていた人狼の耳元にそっと囁いた。
アッシュと呼ばれた青年は慌てて笑顔を取り繕う。
「ス、スマ!」
動揺を隠せないアッシュにスマイルは小首を傾げる。
「どうしたの?」
そんな透明人間の様子を、まるで鏡を見るようにじっと見つめるアッシュ。
「…あ!なんでもないっスよ。スマこそ、どうかしたっスか?」
「別に?ただ、ずっと外見てるから何考えてるのかな〜って。」
「…いや、大したことじゃ…」
そう答えてアッシュは曖昧に笑った。
そんなアッシュに、少し口を尖らせるスマイル。
「…言ってよ。」
「え?」
「なんでも言ってよ。」
もやもやとした不安が心に影を差す。
「ボクはなんだって、いつだって、伝えたいと思ったら伝えるよ。」
だって
言葉だけは
心だけは
消えて無くなってほしくないんだ。
後には何も残らなくても。
今。
今しかないって、
ボクは。
ボクは……。
「スマ…。」
アッシュの少し困った表情に、目を伏せる。
「あ…、そりゃぁ言いたくないこともあるよね…。ゴメンね。」
「そんなことないっス!あの、ちがくて…その、」
言葉を選ぼうと、無意識に首に手をあてる。
「空を見てて…」
「空?」
再び窓の外を見上げるアッシュ。スマイルもその視線の先を追う。
「青くて広くて澄んでて…包まれているみたいなのに、遠くて触れられない。…スマと同じ、だなぁなんて…。」
「ボクと…同じ…。」
寂しげな呟きを咀嚼するように繰り返す。
うれしいような、悲しいような、複雑な気持ち。
でもさっきの影が薄くなる。
それって、こういうことでしょ?
君はボクを想ってくれてる。
「なーんだ。」
「なっ!なんだとはなんっスかぁ!」
思わず顔を赤らめるアッシュを見上げていたずらっぽく笑うスマイル。
「ありがとう、アッシュ。」
「え?」
呆気にとられている隙に窓を閉め、ついでにカーテンも閉める。
「スマ?」
「君が何かを見てボクを思ってくれて、すごくうれしい。」
「え!それは、その…」
慌てるアッシュの手を自分の手で包み込む。
「でも、ボクはここにいるよ。遠くなんてない。そうでしょ?」
「スマ…。」
「うれしいけど、重ねないで。ちゃんとこっちを向いて?」
「…はいっス。」
ねぇ、
ボクの声は聴こえてる?
姿は?
見えてる?
君はここにいてくれてる。
君の中に
まだボクは存在している 。
もっともっと示すから。
伝えるから。
君がボクを遠く感じないように。
ボクの声、姿、心、歌、命、その温度…。
だから君もボクを見ていて。
触れていて。
これからもそこにいさせてね。
何度だって、
もっと君の心を感じたいから。
end.
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暗いのか?ほのぼのなのか?
とりあえず言いたいことを詰めてみました。
うまくまとまってない感満載。
アッシュが弱すぎるし、スマも大人しすぎるけど…。
こんな静かな二人もありかな〜なんて。
カーテン閉めた辺りで少し色っぽい展開になりそうになったのは内緒です。(笑)
最後まで読んでいただき感謝です。
(2010/1/10)