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□さみしがり
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自由なヒトだ、

よくそう言われる。



確かにボクは自由だし、そうあることが自分らしいと思う。
だからいつも君に心配かけたりするけど、君がいつもボクを見てくれてるからこそ、自由でいられるんだよ。





だからこんな、
君が長くいない夜は堪らなくさみしいよ。

真っ暗な部屋で、一人ベッドの上、身動きが取れなくなっちゃう。



ケータイの小さな画面だけが、白く光る。

…アッシュはまだ仕事かな?

君のいない夜は今日で7回目。


君のメールには必ず返信するし、電話もすぐに出る。
でもアッシュからの返事は遅かったり、無かったり…。


仕事だし、忙しいのはわかってる。

君がボクを心配してることも。

好きでいてくれてることも。

わかってるけど、

さみしく思うボクは弱いのかな。


自由でいたいのに、
心が縛られる。


…アッシュのバカ。



頭では理解しつつ、心が追いつかない。
理不尽な苛立ちをケータイに込めて枕に投げつけた。

すると不意にケータイが光り、着信音が流れだす。
「わわっ!」

急いで姿勢を正し、ケータイを取る。
「もしもし?」
『あ、スマ?まだ起きてたっスか?』
「…うん」

電話のせいで少し変だけど、いつも通り、優しいアッシュの声が響く。

『良かった。スマ、ちゃんと食べてるっスか?』
「…食べてるよ」
『睡眠は?』
「…取ってるよ」

うれしいのに、つい素っ気なくしてしまう。
案の定、アッシュの心配そうな声
『…スマ、元気?』

さみしいよ…、
思わず涙が零れそうになる。
上を向いて、悟られないように息を吐く。

「…げんきだよ」


「ほんとに?」

ガチャリと部屋のドアが開いて、聞き慣れた声がスマイルの後方から聞こえた。

振り向くと、ケータイを耳元に当てたままのアッシュがドアのところに立っていた。

「!」
ポロリと、我慢していた涙が零れてしまった。

「ただいま。」

スマイルは耳元でその言葉を聞いたとたんにケータイを投げ出して、ベッドを駆け降りていた。

「アッシュ!」

アッシュはスマイルの細い体をふわりと抱きしめた。

「スマが心配で心配で…、仕事早く終わらせて帰って来ちゃいました。」
「ばかアッシュ!早く言ってよ。」
胸に顔をうめるスマイルの頭をゆっくりと撫でる。
「驚かせようと思って。」
「驚いたよ。」
少し落ち着いたのか、スマイルは上目遣いで頬を膨らませる。

「…でも、嬉しかった。おかえり!」
今度は満面の笑み。


スマイルは自由なくせに寂しがりで、すぐに心配をかけるけれど、感情や表情が豊かなところがいいと、アッシュは思う。


「アッシュ、お土産は?」
キョロキョロと周りを見るスマイル。
「それよりも、もっと深く再会の感動を…」
「えー、お土産が先!」

やれやれ、帰ったとたんコレだ。
しおらしいスマイルも可愛らしくてよかったのにと思いつつ、いつもの自由奔放な態度に安堵する。

お土産はもちろん、彼の大好きなアレだ。


先にスマイルの喜ぶ顔を思い浮かべて、アッシュはそっと微笑んだ。










ボクは自由がすき。

ボクは君がすき。

ボクはさみしがり。



さみしがりなのは、君にだけ。



君がいるから、自由でいられる。











fin..





拝読、有難うございました!
(2010/8/20)

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