原作沿い連載U
□標的60/かつてにふれるたびW
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「!!あっ危ない10代目!!」
「?」
再び意識が遠のきそうだった獄寺は、皮肉にも、すぐそこに迫った魔の手によって覚醒した。
反転したはいいが、この体勢ではニナにまで燃え移る危険があるのでタバコもライターも持てない。
ダイナマイトに点火することさえ出来ず、体当たりすら間に合いそうになかった。
獄寺が己の不甲斐なさに、本当に自害を決意しなくてはならなくなるまであと、何分の何秒かというところで
ひょいっ
「具合悪いみたいだし、やっぱり2階に行ってくるね」
「おう」
「早く戻ってくんのよー」
「山本君もこっち座ったら?」
既に液体を垂らしはじめていた注射器が、スカッと空振りした。
獄寺にしか見えないが、実にいいタイミングでニナが移動してしまったので、侵入者2人も面食らっていた。
これまで1236回この方法で暗殺を成功させてきた。
こんな空振り、初めてだ。
「(!!っあいつ避けましたよ…!)」
「(慌てるな…偶然だ)」
……もう一度。
「あれ?なんか床が濡れてる…」
ひょいっ
「(なーっ!!!)」
「(一度ならず二度までも!)」
またランボが鼻水でも垂らしたのかと思って、ニナは床をティッシュで拭いた。
屈んだニナの上を、注射器が2度目の空振りをする。
ランボの名誉のために言わせていただくと、これは1度目の失敗で零れた注射器の中の毒薬であり、ランボの鼻水ではなかった。
「すっすごいっス10代目…!」
「あ…元気になったんだ。良かった…」
見上げた顔は、本心から自分の身を案じてくれている。
感情の起伏が激しく涙腺の弱い獄寺は、つい目がつーんと沁みるのを感じて、ぶんぶんと頭を振った。
その間も、廊下に出ようとしたニナがいた場所に、注射器がスカッと空振りした。
足跡の代わりに、フローリングには謎の液体が点々と残されている。
どういった奇跡かわからないが、まさかこれで安心出来ようはずもない。
元を断たねば。
獄寺の思いなど露知らずのニナは、獄寺を連れて2階へ行こうとしている。
2階にはリボーンだっているから大丈夫かもしれないが、同時にリボーンが用意している武器の数々も待機している状態だ。
注射器程度なら幸運で避けられても、銃火器ならグッと危険度が上がる。
暗殺者に余計な武装を与える危険を冒すより、この場でしとめておきたいところだ。