原作沿い連載U

□標的60/かつてにふれるたびW
1ページ/5ページ





「!!あっ危ない10代目!!」

「?」


再び意識が遠のきそうだった獄寺は、皮肉にも、すぐそこに迫った魔の手によって覚醒した。
反転したはいいが、この体勢ではニナにまで燃え移る危険があるのでタバコもライターも持てない。
ダイナマイトに点火することさえ出来ず、体当たりすら間に合いそうになかった。
獄寺が己の不甲斐なさに、本当に自害を決意しなくてはならなくなるまであと、何分の何秒かというところで


ひょいっ


「具合悪いみたいだし、やっぱり2階に行ってくるね」

「おう」

「早く戻ってくんのよー」

「山本君もこっち座ったら?」


既に液体を垂らしはじめていた注射器が、スカッと空振りした。
獄寺にしか見えないが、実にいいタイミングでニナが移動してしまったので、侵入者2人も面食らっていた。
これまで1236回この方法で暗殺を成功させてきた。
こんな空振り、初めてだ。


「(!!っあいつ避けましたよ…!)」

「(慌てるな…偶然だ)」


……もう一度。


「あれ?なんか床が濡れてる…」


ひょいっ


「(なーっ!!!)」

「(一度ならず二度までも!)」


またランボが鼻水でも垂らしたのかと思って、ニナは床をティッシュで拭いた。
屈んだニナの上を、注射器が2度目の空振りをする。

ランボの名誉のために言わせていただくと、これは1度目の失敗で零れた注射器の中の毒薬であり、ランボの鼻水ではなかった。


「すっすごいっス10代目…!」

「あ…元気になったんだ。良かった…」


見上げた顔は、本心から自分の身を案じてくれている。
感情の起伏が激しく涙腺の弱い獄寺は、つい目がつーんと沁みるのを感じて、ぶんぶんと頭を振った。

その間も、廊下に出ようとしたニナがいた場所に、注射器がスカッと空振りした。
足跡の代わりに、フローリングには謎の液体が点々と残されている。
どういった奇跡かわからないが、まさかこれで安心出来ようはずもない。
元を断たねば。

獄寺の思いなど露知らずのニナは、獄寺を連れて2階へ行こうとしている。
2階にはリボーンだっているから大丈夫かもしれないが、同時にリボーンが用意している武器の数々も待機している状態だ。
注射器程度なら幸運で避けられても、銃火器ならグッと危険度が上がる。
暗殺者に余計な武装を与える危険を冒すより、この場でしとめておきたいところだ。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ