原作沿い連載U

□標的64/ちぐはぐのパンドラW
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「はあ…こんな時いつも僕だ…」


ため息をつく僕の背中で、ぐうぐうと寝息をたてるランボ君とやらのポケットから出てきた地図をたよりに
僕は沢田リボーンさんという人の家を目指していた。
足どりが重く感じるのは、背負った幼児や抱えた箱のせいではなく、ただ単に行きたくないだけだ。
あの外国人みたいなのがゴロゴロいたらどうする。


「このへんのはずだけど……ホントにご近所じゃないか…」


それにしてもあの限定版CD、不思議なことにただの初回ではなく予約限定の特典込みという素晴らしいコンディションだった。
それがどうにも引っかかってならない。
そんなものを僕が所持していることを察知したうえで、あんなタイミングで持ってよこしてきた。
一体どんな人なんだろう、この子の保護者って。
ボヴィーノって会社名か何かだろうか。
さもなくば闇の世界…ってそんなわけないか、といいきれないところが恐ろしい。
想像は更なる不安は呼んでくるけど、答えをくれるわけじゃない。
成金ぽい悪人面の外人が、プール付きの庭と豪邸をバックに僕を見下ろすビジョンが脳内上映会をはじめた頃、
地図上の沢田家と同じ場所が現実でも見え始めた。
思わず僕に地図を確認させてくれた実物の沢田さん宅は、僕が想像していた豪邸とは大違いの普通の一軒家だった。
しかし、この地図に従うならば、あそこに間違いなかった。
地図が間違っている可能性は、遠目に見える表札によって消えうせた。


(普通の家だ……よ、よかった……んだよね、たぶん…)


あくまでイメージトレーニングの話ではあるが、大きな洋館の前にそびえたつ門の横から
インターホンで執事と会話したうえで家主と拝謁するシュミレーションも無駄に終わったようだった。
けれどもこれは喜ばしいことであると言える。
これなら玄関先で箱と幼児の返却を一気に済ませ、はいさようならが出来そうだ。
そうと決まれば、嫌なことは早めに終わらせよう。


「むぅー!!」


前方から聞こえてくる高らかな女の子の声に驚いた僕は、つい足を止めてしまう。
意気地のない僕の中でやっとついた踏ん切りは、やはり意気地なしであっけなく
たかが女の子の声くらいで、あっさり引っ込む程度のものだった。
それに自慢じゃないが、僕は女子というもの…とりわけ、僕とは正反対の溌剌とした異性があまり得意ではなかった。
だんだんと近くなってくる声がひとつではないことに気づいてうかがってみると、女の子は4人組であることがわかった。
緊張していたところでうっかり驚いて一歩引いてしまったけれど、別段気後れする存在ではない。
ところが、彼女らの行き先が僕の目的地と重なってしまったために、僕は彼女たちの動向を見守らずをえなくなった。
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