原作沿い連載
□標的23/試されたファミリー
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エンツィオ騒動の翌日、沢田家の門前には黒の集団が再集結していた。
朝っぱらから刺激の強いものを見てしまった、自称一般人の沢田家の長女は腹の底でうんざりした。
「ボンジョルノボンゴレ10代目」
挨拶とともに歩み出てきたのは、昨日名実ともにニナの兄貴分となったディーノの右腕ロマーリオだ。
(この人、昨日部屋にいたディーノさんの側近ぽい人だよね。
よく見ると渋くて素敵な人だなあ……)
中身の年齢はディーノよりも高いニナは、あまり若い異性に胸を高鳴らせることはない。
久しぶりに間近で見る大人の男性に、不覚にも少し浮ついてしまう。
それと同時に、自分は昨日勢いにまかせてこんなおじ様に「靴を脱ぎなさい!」などと指図してしまったのを思い出して、
恥ずかしさに身が縮む思いだった。
「お、おはようございます…すみません昨日は、その…靴を脱げって
偉そうに言ってしまって……」
最初は何について謝罪されているのかわからなかったロマーリオだったが、恥じらいながら紡がれた言葉を理解すると
笑って否定した。
あれは日本での礼儀を弁えていなかった自分たちに非があることだ。
結局掃除をしてくれたのは目の前のこの少女なのだし、謝られる謂れなどありはしないのだ。
「謝るのはこちらの方ですよ。すみませんね
昨日はうちのボスまでお世話になったんだ
逆に礼を言いたいくらいですよ」
「そう言ってもらえると助かります……ありがとうございます」
日本女性は慎み深いというのは本当のことだったのかもしれない。
お辞儀をしてから「ディーノさんですよね、呼んできますから待っててください」と言い残して
再びドアの奥に引っ込んだ少女を見て、ロマーリオは自分が嫁を探すなら日本人がいいかもしれないな、と思った。
しばらくすると、耳に馴染み深い自分の主の声が仄かに聞こえた。
「寝ぼけたまま歩いたら危ないですよ」
「ん…」
「またズボンの裾踏んで「ぶっ!」…転びますよって言おうとしたのに……」
どうやら転んだらしい。
この会話もおそらくは入り口付近にいる自分と数人くらいにしか聞こえてはいまい。
聞いていると思われる数人は、口元が今にも笑いそうになっているからすぐわかる。
昨日はエンツィオに負けていたというのに、この様子では無事打ち解けることができたようだ。
大変喜ばしい。
会話がまるでだらしのない兄としっかり者の妹のようなのは、この際聞かないフリだ。