原作沿い連載U
□標的48/袖の下検定試験
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降り立ったそこは一面のマリンブルー。
美しい海岸からくるりとターンすれば、楽しそうなテーマパーク。
リゾート地としては何の文句もない一級品だ。
「これでマフィアがいなきゃね……」
「何言ってんスか10代目!
ここのセキュリティは万全なんで
マフィアかその関係者しか来れないんスよ!」
だから安心っスよ!と、ニカっと笑う相手に話は通じていない。
やさぐれた琥珀の瞳が半開きに細められた。
リボーンの形をしたバルーンやら、そのリボーンに記者会見をなどと寝言をぬかす輩をさらりと無視したニナ。
いらんものは見ないに限る。
早々と水着に着替えて浮き輪まで装備した子供たちの姿に、あんなにはしゃいでかわいいな〜などとちょっぴり癒されつつ……
リボーンから離れてゆっくり、という当初の淡い期待がガラガラと音をたてて崩れていくのを感じていた。
「おいニナ
入島手続きしてこい」
「あなたはまた唐突に…何で私が?」
騙して連れてきたことにはもう文句は言っていないけれど(船の中で散々叫んだので)じと〜っと恨みがましい視線はまだ健在。
獄寺が「それならお供します!」と嬉々として右腕らしく挙手するのを傍らに、リボーンは自分も水着に着替えている。
ニナに行かせる気満々である。
こういうのは普通、引率者…大人など、この場合連れてきたのはリボーンなのでこいつが行くべきではなかろうか。
「受付にいって着いたって報告するんだぞ
ニナを代表者にしたからな」
「だから何で「さすがっスリボーンさん!」……何が」
さすがなの?
ニナは握りこぶしで目を輝かせる獄寺を見て口に出そうとして、言うだけ無駄かもしれない…諦めた。
説得は可能かもしれないが、その労力を考えると、今までの経験上面倒くさい…もとい大変だと判断。
戦略的撤退である。
「ここにいるから
さっさといってらっしゃい」
にこにこと手を振る奈々は、ニナちゃんなら大丈夫よね〜という安心の元に些かの疑念も抱いていない。
娘を信頼するのも結構だが、その娘からすると、いずれ悪い人に騙されやしないかと日々不安になる楽天さだ。
というところで、もう自称右腕が身近な悪い人に騙されているのを見て、ニナは一層疲れた。
「ニナはボスだからな
受付くらいひとりで朝飯前なんだぞ」
「まったくです!」
オレ、間違ってました!!
引き際を心得るのも右腕としての腕の見せ所っスからね。
そんなことを言う使命感いっぱいの獄寺が、引き際の何たるかを語るには10年早い。
彼はいつも急発進、急ブレーキの男だ。(そして事故る。)
尤もらしいことを言う悪い人はただ、ニナに何だかんだ面倒を巻き起こしたいだけなのである。