原作沿い連載U

□標的50/ウソじゃないよホントだよ
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白くて小さな細い指が、海岸に数多ある岩のひとつに食い込むように乗り上げた。
まだまだ発展途上の小さく丸い爪を海水で光らせ、荒い息を吐く少女の姿はこれまたあられもないもので、
身に着けていたのは濡れそぼった下着のみ。
比重の違いを感じて緩慢な動きになってしまう四肢が、どうにかこうにか肉体を陸地に押し上げる。
全身に水を滴らせ、辺りの岩にまで飛沫を飛ばしてしまった少女の額に炎が見えたが、それもすぐに消えた。
水の中では燃えていたのに、水がないのに消えた炎の理屈を常人に理解させることは困難だろう。

もっとも、常人などここにはひとりたりともいやしないが。


「…っきなりなにすんのよリボーン!!
 死ぬかと思ったじゃない!」

「じゃねーと死ぬ気じゃねーだろ」

「あー言えばこー言う!!
 しんちゃんかあなたはっ!」


本当に不意打ちで渦の中に特攻させられたことに文句を言うニナは、自身の格好に泣きたくなる。
ギャラリーが赤ん坊だけなのでまだいいが、これからどうやって帰ればいいというのだ。
着替えなどはすべて奈々が持っているというのに。

今日着てきた服だって着やすくて結構気に入っていたし、何より勿体無い!
かつて服だったものを視界におさめて、なんとか手でくっつけて帰るか?とも考えるが、それでも注目は避けられないだろう。
多くの視線に晒され、あまつさえ様々な邪推をされることは目に見えている。
いくら鈍くて楽天的な母だって、娘のそんな姿を見たらどう思うだろうか。

リボーンが勝手に死ぬ気弾を撃ったことよりも、強制的に渦に飛びこまさされたことよりも、
好きだった洋服が破けてしまったことよりも……


「いつまでそーしてるつもりだコラ!」


悲しそうに下げられた眉を隠すように、大きな布が頭からかぶせられた。
使い古してあるせいか、少しだけ硬いタオルの感触がニナを覆う。
声の主からして、コロネロの手によるものだとわかったニナはじんわりとあたたかくなった。

視界を遮られる前に見えた黒い瞳が、何だか………気のせい?


「今のがボンゴレの死ぬ気弾か」

「そーだぞ
 ま、一応こいつは自力でもなれるがな」


リボーンといくらか言葉を交わしたコロネロは、白いタオルから顔だけを出したニナを見て満足そうに笑った。


「約束どーり合格だぜコラ!
 こっちへ来い
 そのままの格好でいる気か?」

「!……あ、待って」


背を向けて歩き出すコロネロに置いて行かれないよう、ニナは悪い足場に滑りそうになりながらもその小さな背中を追った。

リボーンと同じアルコバレーノ……ただそれだけで関わりたくない人物入りしてしまったコロネロ。
悪い人、ではないということはわかっていたけれど、
改めてどうしてリボーンがこんなに彼を信頼しているのかがわかった気がした。

大きな白いタオルを胸の前で合わせる指が自然と柔らかくなった。
まるで気が安らいでいくのをそっくりあらわすかのように……


「コロさん!!」


ぺたぺたとついてくる少女の声に、青い瞳が若干大きく開く。

まるでコロッケが好きそうな某からくりのようだが、コロネロは日本のアニメなど知らない。
しかし、何となく…ちょっと軍人としてはどうかと思ったりする。
ちなみに、彼女の母から紛れもなく某からくりのように「コロちゃん」と呼ばれることになるのはそう遠くない未来。

ファルコがどこか楽しげに鳴いた。
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