原作沿い連載U

□標的52/うっかり軍師は紫の
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獄寺は森の奥、文字通り草の根分けそうな勢いでニナを探していた。
城の中で待っていれば合流できると思っていたのに、どれだけ探しても彼の人はいなかったのだ。

実を言うと、獄寺が城のエントランスでニナを見つけそうになったときに、
故意にニナを獄寺から隠し、奥の調理上にせかしたのはビアンキである。
自分の愛人ならばこのようにする方が好むだろうと思ったのもあるし、ビアンキもその方が面白いと思ったからだ。
愛する人を懸命に探し歩く弟…それを心配して自ら危険な場へ赴く将来の妹(予定)
俄然燃える展開ではないか!

傍迷惑なことこの上ない姉である。
すべては愛のためなのだ。


そんな裏事情を知らない獄寺は、バカ正直に森の中を「10代目〜!!」と大声で歩いて闊歩していた。
一応島の裏側を目指しているあたりはきちんと考えがあって行動しているようだが、カルカッサファミリーの構成員が
続々と島に侵入してきている今、たったひとりの獄寺が敵に己の位置を教えるようなこの行動は自殺行為と同意義である。
よく回る頭はやはり、大事なものが絡むとあまり機能しないものらしい。
それとも、それでニナが見つかるのならかまわないと思っているのかもしれない。

さっそく大勢の黒尽くめのライダースーツに見つかってしまった。

獄寺はそれを理解すると、さっと身を屈め、匍匐前進でゆっくりと発見された位置から離れた。
こうすれば、木々や草花のおかげで獄寺の正確な位置は遠くからではなかなか見つけることはできなくなる。
身を隠すことにかけては、大多数の部隊よりも少数に分がある。
数ばかりいても、肝心の敵が見つけられなくては話にならないのだ。
だが、それも時間の問題だろう。
囲まれれば囲まれるほど、近づかれれば近づかれるほど、獄寺にとっては不利な状況になる。


(ここはひきつけられるだけひきつけてから、集まったところを一気に叩くのがベストだな)


幸いここは森の中。
獄寺の武器は障害物の多い地形でこそ本領を発揮する。
仕損じたとしても無傷では済まないだろうし、爆煙で逃げ切ることができる。

少しずつ移動しては、獄寺は懐のものをばら撒いていった。
できるだけ爆発の規模を大きく、誘爆を狙って仕掛けをほどこした。
敵との間に罠を挟んだ獄寺は、勢い良く立ち上がり叫んだ。


「果てろぉおっ!!」


吹き上げる黒い煙は、彼の探し人の目にも届いた。
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