拍手お礼〜IFシリーズ〜

□〜 IF CASE 骸 〜
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突然訪れた死、そしてまた突然訪れた生。
おそらく普通ではありえないであろう、前世の記憶を持ったままでの転生は
本来それだけで十分驚くべきことだ。
だけどもっと驚いたのは、ここがあの世界だったこと…






『生まれ変わったその先は…』〜 IF CASE 骸 〜





どこで生まれたのかはもう覚えていない。
気がついたらこの研究所にいたから…言語からしてイタリアだということはわかるけど、物心がついてからは1度も
ここから出たことはないので本当にイタリアなのかは判断しがたいところだ。
だって外に出たら、外の人に殺されてしまうから………
もしかしたらイタリア人の使っている異国の研究所なのかもしれない。
そんなことはどうでもいい……ここがどこなのか、そんなことはたいした問題ではなかった。
本当に問題だったのは、この研究所で行われる人体実験の方にこそあった。
子供の悲鳴が途切れることのないこの建物では、毎日非道な実験が繰り返されている。
一度殺された体験をした私でさえ、ここでの生活は死ぬよりも痛く、死ぬよりも辛いと断言できる。


どうしてこんなところに生まれてきてしまったのだろう?
もう死んでしまいたい、そう何度も思った。
けれど、今死んだとしてまた私が転生しないという保証もない。
ここで命を絶っても、次はもっと残酷な運命が待っているのかもしれない。
それなら、今の命を精一杯大事にしたかった。
なまじ死の恐怖を知っている私は自ら命を絶つことも出来ず、ましてやここにいる子供たちを残してなんて死にたくなかった。
この子達は、前世で幸せと言うものを知った私と違って、本当に何も知らないのだ。
この子達に比べたら、幸せを知っている私はなんて幸せなのだろうと思う。
ここは兵器を開発するところだ。
それならば力を手に入れよう。
そしてこんなところとっとと抜け出してやる。



ある日、私にとうとう『あの眼』が移植された。


その眼とともに流れ込んできたのは六道輪廻の記憶……私ではない私と重なっていくような感覚だった。
その膨大な情報に世界の悲しさを見て涙が溢れた。


手術が終わった時、私の新しい右目には『六』の文字が刻まれていて
両の瞳からは涙が止まらなかった。
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