マカロンひとかけ

□イヅル記念日
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「おめでとう」


「…意味が分かりません」
珍しく、執務室の戸が開いたかと思えば、いつも昼間ならば決して(どうして決してだなんて言わなければならないのかが癪だが)姿を見せないであろう銀色が覗き、開口一番そう言われた。
「今日は、何日?そう、イヅルの日や」
ニコニコニコ、得体の知れないいつもの笑みが僕を覗いてはぁ何言ってんのこいつと言いたいのを堪えて意味が分かりません、とかろうじて其れだけ伝えた。
「ちゅーして」
「…意味が分かりません」
あれ、僕さっきから同じ事しか言ってない気がする。
そんなことを思っていたら、唇に生暖かい感触が当たって気付いたら奪われていた。
しぱり、しぱりと瞬き三回。
かぁと頬が熱くなるのがわかって、このやろうと拳を上げようとしたら積まれた書類に当たって散った。
…最悪だ。
唇を引き結んで散らばった書類を集めていたら隊長が屈んで僕の頬を挟んだ。
「…何ですか」
「今夜、お祝いに行くからな」
ニコ、と意味深な笑みを浮かべる隊長の言葉は、やはり意味が分からなかった。



了.

12月6日記念

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