緋色の欠片
□◎心の在りか4
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俺は、いやな予感が外れていてほしいと神社に向かう途中ずっと心から願っていた。
そして、神社に着いた_____。
そこには、信じられない光景があった。
「あら・・案外早かったのね」
誰よりも先に口を開いたのは婆様だった。
婆様の含みのある発言はまるで、俺たちがここに来るのを初めから察していた様な物言いだった。
だが、俺たちはその言葉をも、聞き流すくらいな光景を目の当たりにし、婆様の言葉に反応している余裕も無かった。
「どうして・・?お婆ちゃん」
俺は涙ながらに訴える珠紀の方に手を添えた。
「おい、ばばぁ、これは一体どういうことだ・・・」
俺はもう、宿命など関係なしに、婆様に問い掛けた。
問いかけの理由・・・それは、今、俺たちの目の前でボロボロになっている拓磨について、そして・・・拓磨に危害を加えたであろう守護者の三人についてだ。
「おい、くそばばぁ!!拓磨に、その他の三人に何をした!!」
「まぁまぁ、そんなに声を張り上げないで・・・卓、祐一、慎司には少し術を施して意識、記憶、感情を一時的に封印しただけよ」
「それで拓磨を襲わせたのか!!」
「あまりにも抵抗するものだから」
「ババァ・・・何が目的だ」
婆様はにっこりと微笑んだ。
そして____
「簡単なことよ・・・真弘、あなたが選ぶのよ」
と言って拓磨を五芒星の前まで意識のない祐一に連れて行かせた。
「もう、これでわかるわね?」
「・・・・っ」
「先輩・・?どういう・・・ことですか?」
「珠紀・・・」
珠紀は分かっていないようだった。
婆様が示す行為は、つまり、このまま拓磨を生贄にするか・・・それとも俺が生贄になるか。
「・・・ったく、ばぁさんよ・・あんたもツクヅク卑劣なババァだな」
「・・・もう何とでもいいなさい・・それより早く結論を出しなさい・・真弘?あなたが___」
「待て、その先は言わなくてもいい」
こんな話、珠紀が聞いているのにできるはずがない。
「・・・真弘・・先輩?」
ほら見ろ・・・不安がってんじゃねぇか・・・
「何でもねぇよ・・心配すんな・・・」
「決まったのね」
「あぁ。だから拓磨をはなせよ」
「いいでしょう」
俺がそういったと同時に、拓磨が目を開けて途切れ途切れに話し出した。
「・・・真・・弘先輩・・駄目・・ですよ、俺は・・大丈夫・・・」
「うっせぇ!!てめぇは黙ってろ!!」
ビュオッ
そう言いながら俺は羽で飛び、拓磨の所まで行き、拓磨を抱えて珠紀の元へ運んだ。そして_____
「珠紀、好きだ。俺はお前を誰よりも愛してた。」
「先輩・・?」
そう告げて、再び婆さまの元へと飛んだ。