水の旋律
□●★囚われ姫は檻の中
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「ちぃ姉・・・僕のところにおいでよ、大切にしてあげるから・・・僕と来るなら、設楽にはこれ以上何もしないで上げる・・・」
好春のその言葉は、私の心を・・・・えぐった。
まるで、鋭い刃が深く突き刺さったように。
好春は家族だと思ってた・・・。
鴉と戦う時も一緒に戦ってくれた・・・でも、あの鴉を操っていたのが・・・好春だったなんて・・・
幸せだった日々が色褪せて崩れ落ちていく・・・
「・・・・ずっと騙してたの?シスターも、京にぃも・・・私も」
信じられない・・・信じたくない・・・
「・・・ちぃ姉?僕のものになるって言うなら、全部教えてあげるよ・・・どうする?僕について来るか・・・それとも、此処で設楽が殺されるのをじっくり見てるか・・・?」
・・・『殺す』そんな言葉、好春の口から聞きたくなかった・・・ここに居る好春は・・・もう、私の知っている好春じゃない・・・。
私が好春の所へ行かないと・・・設楽君、本当に殺される・・・でも、
「・・・やっぱり、設楽がいいの?ちぃ姉は。・・・僕のほうがずっと一緒に居たのにな・・・もう、ちぃ姉の意見なんかどうでも言いや」
好春は、私が結論を出す前に、私をぐっと自分のほうに引き寄せて言った。
「ちょっ!!なにすっ、離せ」
「・・・ちぃ姉がどんなに嫌がっても連れてくよ?だって、僕ずっとちぃ姉の事が好きだったんだからね・・?大丈夫・・・ずっと大事にするよ・・・僕の傍で・・・ずっとね」
好き・・・?嘘だ、だって・・・好春はずっと弟みたいで・・・だって、好きならこんな事しない・・好きなら・・相手を傷つけたりしない・・・これは、私を利用する為の嘘・・・好春・・・あんた、嘘ばっかりだね・・・。
「離せ・・・!!」
私は力を振り絞って、好春を振りほどこうとした。
「・・・無駄だよ・・僕、もうとっくにちぃ姉より強いから・・・抵抗しないで大人しくしてるほうがいいよ」
好春は、私がどれだけ振り解こうとしても、びくともしなかった。
「大好きだよちぃ姉・・・」
え・・・
そういった好春の顔には、辛そうな笑みが浮かんでいた・・・
どうしてそんな顔するのかと考えようとしたが、私の意識はそこで途切れてしまった。
「・・・心が手に入らなくてもいい・・・だって、僕がちぃ姉を好きで居るから・・」
次にちぃ姉が目覚めた時は・・・もう、僕のものだからね・・・好きだよ・・ちぃ姉。