たいとる
□2、花火
1ページ/2ページ
暗い闇に霧がかかり、更に濃くなる夜の夢。
ヒュルルルル…ドーン…
何処かで花火があがっている。
辺りは人気も無く静寂が広がっている。
逃げてきた。家から。
逃げてきた。孤独から。
逃げてきた。
…─世界の、すべてから
「もう、いいや…」
疲れ果てた表情に
枯れ果てた涙
私が、どうなろうと
家族が、どうなろうと
世界は、まわる。
ヒュルルルル…ドーン…
闇の中で膝を抱えてうずくまる。
「…ひとりぼっち」
左右の眼球の色が違う。
日本人の両親から産まれたのに。
(母さんの浮気疑惑で家庭が崩壊しそうになってるけど、母さんは浮気なんてしてないよ…今も、ずっと…)
(結婚したときから父さんの事だけ見てきた母さんを疑うなんて、)
(父さんも母さんも大好きだったのに、)
目を閉じると真の闇が広がる。
ドーン…
激しく疲労していたわたしは、そのまま深い闇に堕ちていった。
『…どうです、ここは心地よいでしょう』
目を開けると男の子が立っている。
……─オッドアイ。
一番みたくないもの。
フイ、と顔を背けると
『キス、していいですか?』
突然言われたもんだから、ポカンと口をあけて黙りこんでしまった。
『クフ、では、いただきます』
チュ、と軽く口づけられる。