本棚1
□「ス」から始まる3文字の…
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どんよりとした黒い空。強めに吹いてくる湿った風。
わかりやすい台風の前兆だった。
「ピクルス、大変だ!スバルがスイカになっちまった!!」
開口一番、アクロはそういった。
ピクルスが雨戸を閉じ終えるのと、アクロがドアを開ける派手な音と、アクロが突拍子もない事を言ったのは同時だ。
「馬鹿な事を言うな少年!人がスイカになんかなるわけ無かろう!!」
フワリと滑空してアクロの前に降り立つと、両手を振り上げ抗議の意を示す。
アクロはしゃがんで視線を合わせ、諭すように言う。
「よく考えろピクルス、スバルの頭ってスイカみてぇだろ?」
「ん?う…うむ…。坊ちゃんは気にして居るが…」
本当はメッシュを入れているだけなのだが…そう見えない事もないのが不思議だ。
「だろ?だから体まで似て来て、遂に本当のスイカになっちまったんだ」
「…、いくらなんでもそんな嘘では騙されませんぞ?」
「じゃあ見に行ってみろよ。キッチンにスイカがあるから」
………
………………
まさかな…
…………………;
「ちょっと見てくるだけだからな!」
ピクルスは体を布状にし、一直線にキッチンまで飛んだ。
暫く廊下を進むと、ちょうど曲がってきた何かにぶつかった。
「うわぁ!…って、ピクルスさん?」
顔から剥がされた声でデコだと分かる。
「少年!良いところに!!キッチンにスイカがあると言うのは本当か!?」
「え?あ、はい。ありま」
「やはり!坊ちゃぁぁァァん!!」
話を最後まで聞かずに、ピクルスは飛び去った。
(…アクロさん、何があったんですか?)
(ん?ちょっとな♪)