りぼーん

□泣かないで?
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「ううぁ〜・・・」

今年もとうとうやって来てしまった。

俺の大嫌いな季節。
暑くてただでさえ体がだるいというのに、
なんでだよ…。

「なんで体育祭なんてあるんだよおー・・」




・。*$ 泣 か な い で ? $*。・





「じゃあ、わたし達のクラスはサッカーとバスケットボール、二人三脚に参加しようとおもいます!」


夏。
綱吉たちの学校ではこの季節になれば毎年体育祭が行われている。
運動音痴の綱吉にとって、このイベントにはあまり気が乗らなかった。
というか寧ろ、体育祭絡みの話になればテンションが急激に下がるほどに。


「ツナ、二人三脚誰とやるか決まったかー??」
自分の席で、黒板の前に立つ学級委員をぼーっと見つめるツナの肩をポンっと叩きながら山本が言う。
「えっ?…えっと…あ、まだだけど…」

話を聞いていなかったために一瞬あたふたと戸惑いながらも、なんとか状況を理解して返答する綱吉。
「なるべく背が同じくらいの奴と組めだってさ」
話し合いのときからぽけーっとしている綱吉を、眉をゆがめ心配そうに見ながら言う山本。
「うん、ありがと」
綱吉は山本に小さな笑顔を浮かべて、小さく息を吐きだした。

俺と組んでくれるひとなんていんのかなあー…。

憂鬱そうな顔で机に肘をついて、またぼーっとし始めたときだった。

「十代目!」
がやがやと騒ぐ教室で、綱吉の耳にはっきりと聞こえた声。
「獄寺くん?」
名前を呼んだのと同時に、綱吉が声のした後ろを振り返ると、その声の主は既に綱吉のかおに近い距離にいた。
「十代目!一緒に二人三脚参加しましょう!」
にっこりと満面の笑みでなんの躊躇もなく綱吉の両手を握る。
「・・へ?当たり前でしょ?」
いくらやりたくなくてもさぼろうとは思わないよー?と、きょとんとした顔を向ける綱吉。

まぁ…ちょっとさぼっちゃおうかなと思ったこともあるけど。

「違いますー!…あっ、や、違くないんすけど、俺と二人三脚のペア組みましょう!ってことです」
くるくると表情を変えながら、綱吉の手をより強く握りきらきらした目で訴える獄寺。
その言葉と獄寺の真剣なのか分からないようなでも真面目なような顔を見つめながら、どういうことなのかを頭のなかで整理する綱吉。

「…ええーっ!」

わかってくれたんすね…!と獄寺がさらに目をきらきらさせる。
「え、でも俺…っ駄目だよ!やらないから!」
獄寺の手を払って、両手を顔の前で横に振る綱吉。
そんな綱吉を見た獄寺はふしぎそうな顔をした。
「なんでですか?やっぱ俺とは・・・嫌ですか?」
と言い乍ら獄寺は、さっきまでしっぽをぶんぶん振りまわしていた犬が急にしょんぼりしたような顔をした。
「ちがっ・・そうじゃなくて・・っ」
綱吉が慌てて両手をまた横にブンブン振った。
すると獄寺はたちまち嬉しそうな顔をして、
「じゃあ決まりっすね!頑張りましょーね十代目!」
と勝手に話をすすめてしまった。
綱吉にはこの天然(つーか単純とゆうか)男のおかげで、もう弁解する気力もなくただ両手を握られ気合と幸せに満ちた顔に見詰められるだけだった。

でも獄寺君すごい嬉しそうだなあ。
そんなに体育祭楽しみだったのかな?

「良かったね、獄寺君。体育祭楽しみなんでしょ?」
綱吉は優しく微笑んだ。
「えっ? あ、はいっ!」
獄寺は、一瞬きょとんとしたがすぐにいつもの笑顔になった。

獄寺君の足手まといにならない様に、気つかわせないように、頑張ろう。
綱吉は少しだけやる気が出てきた。
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