りぼーん

□夜海
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「隼人、海行こ」

「…はぁ?」



.*$ 夜海 $*.


時刻は午後8時。
日の長い夏とはいえ、外はもう暗くなり始めている。
雲雀はいつものように獄寺の家に上がり込み、自分の家のようにくつろいでいた。
そんなときに突然言い出した。

「隼人、海行こ」
「はぁ?」

寝転んで雑誌を読んでいた雲雀が、むくりと起き上がった。
急に海に行こうと言い出すので首を傾げる獄寺。
「え、今?」
「今すぐ」
そう短く言い、雲雀は出かける支度をし始めた。
「何で急に…」
ぽかんと、ソファに座ったままの獄寺の腕を雲雀が引っ張り、されるがままに連れていかれた。


電車で30分揺られ。
来てしまった。

ざざぁーん

優しい波の音が、夜の暗闇の中で響く。
もうさすがに真っ暗になってしまい、海は黒く染まっているようだった。
2人は砂浜を進み、波打際までやってきた。
「んー」
雲雀がぐぐっ、と伸びをして、気持ちよさそうに目を閉じた。
「なんか、昼と違っておだやかな感じがするな」
獄寺が黒い海を見つめながら言った。
「そうだね。僕は夜の海の方が好きだしね」
すると、獄寺は、なんだか急にこの海に触れたいという衝動に駆られ、履いていたビーチサンダルを抜いで、波の方へと駆け寄った。
「隼人…?」
ぱしゃぱしゃっ…
獄寺は足首くらいの浅さまで駆け、足で海水を蹴ってみたり、手ですくってみたりした。
「危ないよ、あんまり深い方まで行ったら…」
雲雀が危なっかしいなあ、というように呼び掛けた。
「へーきだって!んなことよりほら、恭弥も入ってみろよ!すげえ優しくて、あったかい感じがする」
獄寺の子供の様な微笑みにつられて、雲雀もズボンの裾をまげて入ってみた。
「うわ、冷たいじゃない…」
「そうかぁ?」
それから2人で海水を掛け合ったりして笑い合った。
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