りぼーん

□おねだり
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ザァァァァ…

窓の外では、大粒の雨が叩きつけるように降っている。

「う…さむ…っ」

先程雨の中走りながら家に帰ってきた獄寺は、バスタオルを頭から被りながら、ソファの前にもたれるように蹲っていた。


。・+ 雨の日の夜 +・。


ガチャッ

突然、静かな部屋に玄関のドアが開く音が聞こえた。

「ただいま」
玄関を通って獄寺のいるリビングに、まるでこの家主のように入ってきたのは雲雀だった。
彼は持参のタオルを自分の頭にかぶせ、水滴を垂らしながら、
「ねえ、シャワー浴びていい?」
制服のネクタイを外しながら言った。
「…傘持ってなかったのかよ?」
「君だって持ってなかったじゃない。応接室から見たよ、大雨の中走って帰ってるの」
獄寺がうっ・・と身を縮ませた。
「っつーか、なんで勝手に上がり込んでんだよ!しかも最近毎日じゃねえ?」

そうだ。雲雀は最近学校帰り、獄寺の家に勝手に上がり、そのまま獄寺と眠り、次の日には何事もなかったかのように学校へ行くのだ。

「隼人といたいから」
雲雀はふっと笑って浴室に向かった。
「ばあか」
獄寺はぼそっと呟いた。

そもそものきっかけは、学校帰りに雲雀が獄寺の家に寄るようになったことだった。
そのうち、獄寺が1人暮らしなのを良いことによく泊まったりするようになり、最近では、別々で帰っても雲雀が必ず獄寺の家に帰ってくるようになったのだ。
そして夜は一緒にベッドで寝る。時間があって2人が望んだときは、そこで繋がることもあった。

獄寺は、なんだか同棲していることが嬉しくて恥ずかしくて、つい照れ隠しでツンツンしてしまうのだが、いやなわけではなかった。

その証拠に、毎日雲雀より早く帰ってくる獄寺は、わざと鍵を開けたままにしている。

雲雀がいつ帰ってきても、勝手に入れるように。



「はー、すっきりした」
シャワーを浴び終えた雲雀が、再びリビングへやってきた。
雲雀は、ここに住み込むようになってから、自分の家から持ってきたジャージを着て、肩にタオルをかけていた。
獄寺は頭からタオルをかぶったまま、ソファの前で寝転がりながら雑誌を読み耽っていた。
「それにしてもすごい雨だね」
窓の外で、ザァザァとうるさい雨音と共に降り続ける雨を見つめた。
「隼人、寒くない?ずぶ濡れで帰ってきたんでしょ?」
雲雀が寝転がる獄寺の前のソファに座りながら言った。
「ん…俺もすぐシャワー浴びたから、へーき。ちょっと寒いけど」
「そっか」
雲雀がほっとしたように微笑んだ。
心配されて悪い気はしないし、寧ろ嬉しいので、獄寺は少し頬を赤くした。
「恭弥は?」
それを隠すように尋ねる。
「ちょっとまだ寒いかも…」
雲雀は肩にかけたタオルを、きゅっときつく握った。

少し間があいて、獄寺が雑誌に目を戻したとき。
「ひゃっ!」
太腿になにか冷たいものが触れたのを感じ、びくっと背中を反らした。
恐る恐る後ろを向いて、太腿を見ると。
「んー…あったか…」
雲雀が冷えた足先を、獄寺の温かな太腿と太腿の間にねじ込んでいた。
さっきまで、暖房の効いたこの部屋でごろごろしていたので、獄寺の身体はかなりあったまっていたのだ。
「っ・・てめ・・!」
獄寺はあまりの冷たさに雲雀の足から逃れようとしたが、雲雀はそれを許さなかった。
「お願い隼人。あっためさせて、ちょっとでいいから」

こいつ…上手いこと俺の足挟みやがって…!
俺だって冷てーんだよっ!

「つっめた…!」
獄寺がきゅぅっと目を瞑った。
「…隼人の太腿すごいあったかい…」
うっとりしながら、もぞもぞと温もりを求めて足を動かす雲雀。
「っ…!」
冷蔵庫で冷やされたみたいに冷たい雲雀の足が、自分の温かい太腿に触れれば、身体が自然と反応してしまうのは、仕方が無いことだった。

でも…
でもなんか…
これはなんか違うだろう。

「おい…っ、わざとエロい触り方すんな…っ!」
後ろを振り返りながら、睨みをきかせた。
「え?何のこと?」
雲雀はわざとしらばっくれて見せた。
「てんめぇ…!っひあ…」

ぎゃあああああ!
今のは絶対ヤバい、変な声出た・・!
こんなんじゃコイツの思惑通りじゃねぇか!
そんなのぜってーやだ!!

「っやめろ!!」
獄寺は強引に雲雀の足から逃れ出ようとする。
が、やっぱり雲雀の力には勝てなくて。
「だめー。あったまるまでだよ」
見れば、いつものにやけ顔(に獄寺は見える)でこっちを見ている。
「っ……」
仕方ないので雲雀が満足するまでじっと我慢することにした。

もぞ…っ
「…っ!」
もぞもぞ…っ
「っぁ・・」
もぞもぞもぞっ
「んぅ…!」

もーたえられねえ!!
こんな変態野郎の相手なんてしてられっかよ!

「おい…いー加減、も、退けっ…!」
再び振り返って雲雀を睨む。
同時に、雲雀の足が獄寺の自身に当たった。
「っや…!」
獄寺の身体がびくっと跳ねた。

ちょ…今のって…
わざとなのか、偶然なのか…。

「あ、ごめん。当たっちゃった?」
その台詞だけなら偶然だろうが、獄寺の目は誤魔化せなかったようだ。獄寺は雲雀の演技力によって完璧に造り出されたきょとんとした顔の中に、微かなにやけ顔(に獄寺は見える)を感じた。

やっぱわざとかよ・・!!

「…まじで怒るぞ」
「怒れば?」
雲雀はにやにやと変態っぽく笑っている。
それでもごそごそと動く足は、たまに獄寺のモノに当たっている。
もう諦めて素直に感じてしまおうかと思ったとき。

「あ。もうこんな時間だ。夕飯作らないと」
などと主婦のような台詞をほざきやがった。
獄寺の太腿によって暖められた足先を引き抜き、立ち上がる雲雀。
「何作ってほしい?昨日はオムレツだったから、今日は肉系にする?」
雲雀はリビングのすぐ横にあるキッチンへ向かった。
一方、さっきまで散々雲雀に遊ばれていた獄寺は、起き上がってソファの前で座り、目を丸くしながら雲雀の後ろ姿を見つめていた。

あいつならあの勢いで事に及びそうだったが…。
珍しいっつーか、あいつらしくない…ような…。

そして獄寺は、さっきの雲雀のせいで熱を帯び始めた自身を感じた。

…中途半端なところで止めやがって…。

獄寺は、とりあえず隠すために、両手を両太腿で挟むように座った。

「隼人。聞いてるの?」
雲雀がキッチンのカウンターから少し大きめの声で呼んだ。
「え…聞いてない…」
相変わらずきょとんとしたままの獄寺。
「は?」

様子がおかしい獄寺の元に、雲雀がキッチンからやってきた。
「どうしたの、隼人」
獄寺の目の前に座った。
「べつに…」
獄寺は、両手を太腿の間に置いて、少し勃ち始めた自身を見られないように座ったまま、雲雀から目を反らした。
その不自然な行動を、雲雀は見逃さなかった。

「…そんなことしてないで、素直におねだりすればいいのに」

そう言って、雲雀は突然獄寺を押し倒した。
「な…っ!?」
その拍子で両手は左右に分かれてしまい、もう隠すものが見つからない。
でも雲雀はそんなこと最初からお見通しだったのだ。

「ちゃんと、おねだりの仕方を教えてあげないとね…」
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