りぼーん

□嫉妬は相手をすきな証拠
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「よぉツナっ!」

「てめぇ野球バカまで来んな!…おはよう御座います十代目!」

「お、おはよ…」

いつもと変わらない朝の登校。
だけど…

「仕方ねーだろ?道同じなんだしよ」

「けっ!」

だけどなんだか、最近もやもやする。
なんだろ…?


$*・ 嫉妬は相手をすきな証拠 ・*$


最近、山本と獄寺君が喧嘩しているのを見ると、なんか変な気分になる。
耳を塞いだくなる。
いつからだっけ…獄寺君と付き合い出してからかな?
毎日同じように登校・下校してお昼も食べてた3人だけど、最近は居心地が悪いというか…。
2人は変わった様子もないんだけど…。
だって今日も喧嘩してるし。

「まーまー、そんなおこんなよー獄寺」
「うっせえ野球バーカ!!」

「……」
俺は今日も無言で苦笑い。
毎日のことだし、もう宥める気力もないし。
でもなんかもやもやする。
2人が喧嘩してると、もやもやする…。


(獄寺君ったらムキになって。
山本もほっとけばいいのに。
2人ともいい加減低レベルすぎ。)

前はこんな風に思わなかったのに…。
なんてこと考えてるんだろう…。
ひどいのかなぁ…俺って…。

ううっ、忘れよ!


きーんこーん…

昼休み。
今日も屋上3人。
もくもくと弁当を食べる俺。
焼きそばパンと牛乳を交互に口に含む山本。
タバコをふかす獄寺君。

「今日もいい天気だねー」
ぽわーっと照る日を見上げた。
「そうっすね!」
にこにこと答える獄寺君。
そんな姿にふふっ、と笑みがこぼれた。
「野球日和だな!」
山本が空を仰ぐ。
「ふん、野球バカが」
俺への態度とはうってかわり、山本を睨む獄寺君。
「ははっ!」
褒め言葉と受け取ったのかにかっと笑う山本。
「っ何笑ってやがる!だいたい、なんで毎日お前もここで食ってんだよ!?」
「え、だめなのか??」
「だめにきまってんだろ!俺は十代目と2人で食べてーんだよっ」
その言葉に、俺の心はすこし晴れた。
獄寺君はこういうことはっきり言ってくれるから嬉しい。
「まーまー!3人のが楽しーだろ♪」
山本が獄寺君の肩に腕をかけて、楽しそうに笑っている。
「ちょっ…はなせ!!」
それを逃れようと抵抗する獄寺君。

どくんっ…

心が痛い。
目の前で、2人が仲良さそうに密着している。
その光景を、俺は長く見ていたくなかった。
それどころか、ここから逃げ出したくなった。

こんなの…見たくないよ!!

俺はだっと屋上を飛び出した。
後ろを振り向かなかったから、2人がどんな顔してるかなんてわかんなかった。
ただ、自分が涙を流していたことだけわかった。

わかってるよ。山本が人に懐きやすいことも、獄寺君に何の気もないってことも。
でも嫌なんだもん…!

「十代目!!」
後ろから追いかける獄寺君の声がした。
俺はそれを無視して走り続け、逃げるように男子トイレの個室に閉じこもった。
それをそう遠くない後ろから見ていた獄寺君も、トイレに駆け込んできた。
「十代目っ…!どうされたんですか…?」
俺は個室の鍵をにぎりながら、扉の前でたっていた。
その扉を挟んだ目の前に獄寺君がいるとわかった。
「はぁっ…はぁ…」
2人の息は、走ったせいで乱れている。
「ふ…うぇっ…ん…」
それに混ざって俺の嗚咽が漏れた。
片手で目を抑えながら、涙がしみてくるのを感じた。
「十代目!?ないてんですかっ?」
突然わけもわからず泣き出す俺に、ドア越しから獄寺君の心配そうな声。
今すぐ抱きついてよしよしってしてほしい。
けど、こんな曖昧な気持ちじゃできないよ。
「なんで、ないてるんですか…?」
優しく声をかけてくれる獄寺君。
「ふ、ぇっ…あの…っ」
こんな俺を知ったら獄寺君は俺のことを嫌いになるかな…?
あんなひどいこと思ってたなんて知ったら傷つくかな…。
でも正直に言わない方がだめだよね。
それにもう我慢してずっと見てるのも疲れちゃったよ。
「う…っん、と、俺、最近ほんとに、おかしいんだ…。獄寺君と山本が、一緒にいるの、みてると、なんかっ…やだ、っていうか…もやもやして…2人とも、大切なのに…頭が、ぐちゃぐちゃになっちゃって…」
やっと言ってしまった、と思うと、さらに涙が込み上げてきた。
「だから、さっきも…っ急に逃げ出しちゃっ、て…ごめん…」
うつむきながら、零れてくる涙をぬぐうだけで精一杯だった。
「じゅ…だいめ…、それ、妬いてるってことですよ…」
振り絞ったような獄寺君の声がした。
「えっ…!?」
俺は急に顔が熱くなるのを感じた。
「うそ…ええっ、やだぁ…!!」
獄寺君に見られている訳でもないのに、俯いて顔を隠してしまった。
恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい。
妬いてたんだ…ていうかそのことに気付かなかったのも恥ずかしい…!
もう逃げたい…。せめて顔を見られてなくて良かった。
「すげー嬉しいです。俺もう山本と口ききませんから安心してください!」
いや、それはそれで困るんだけど…。
「あの…」
どうにか俺が反論しようとしたが、獄寺君は続けた。
「それに、俺は十代目のことしか考えてませんから」

そうだ。
その言葉が欲しかったんだ…。
獄寺君はいつも俺の欲しい言葉、してほしいことをしてくれる。
いつも、いちばん辛い時に。

がちゃっ

俺は鍵を解いてドアを開けた。
そこには、綺麗な顔で微笑む獄寺君。
「恥ずかしいじゃん…」
涙目で微笑み返した。
さっきの嫉妬していたときとは全然違う、おだやかであったかくて、愛しいきもち。

山本と喧嘩するのはいいよ。
でも、ちゃんと俺のこともかまって欲しいだけだったみたい。

(:おわり:)
 

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