闇の正義

□異界の戦艦
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(以前より、強いな。宇宙空間だった為か?)


以前より、ビッグコンボイの動きは早い。宇宙空間よりもこうした重力のある地に足のついている場の方が戦闘慣れしているのかとヴァロックは考えた。するとふと野次馬が増えていることに気づき、ビッグコンボイに個人回線を開く。向こうも同じく開いていた為、2人だけの会話を行う


《気づいているか?》

BC《あぁ。俺達は見世物ではないというのに》

《あの様子だと賭け事をしていそうだ》

BC《どちらが勝つか、とそういうことか》

《あぁ》

BC《・・・・・・仕掛けるか?》

《・・そうだな》



互いにニヤリと笑うと不意打ちを狙ったかのように互いのトンファーが相手の顔面スレスレで止まる。つまり、引き分けと言うことだ。野次馬、もとい船員達はどちらが勝つかしか賭けていなかったようで引き分けと言うのは考えていなかったようだ。ブーブーと抗議の声が上がる


「・・勝手に人を賭け事にしたオマエ達が悪いだろう?それとも、誰か俺の相手をしてくれるのか?」


思いっきり顔は笑っていないし、片手を上げ、手の指がゴキゴキとなっている。その姿に船員達は、青褪めて「失礼しました〜!!」とその場から脱兎の如く、退散して行った。ビッグコンボイは、やれやれと思いながら、トンファーを仕舞うとヴァロックから声を掛けられた


BC「?なんだ」

「偶にで良いが、偶にこうして俺の鍛錬に付き合え」

BC「?・・・構わないが」

「・・・そうか」


フッと少し安心したように彼が笑った気がした。それも一瞬で、ヴァロックはマントを翻してその場を去って行った。唖然とするビッグコンボイだった。ヴァロックは自室へと歩みを進める。部屋に戻るとソファに腰掛けて、テーブルにグラスを置き、酒を注ぐ。それを見つめながら、先程の模擬試合を思い出す


「・・・異界の、とはいえ、あぁも似ているものなのか。攻撃の切り替えしも、何もかも」


ヴァロックは、この世界のビッグコンボイと異界の、つまり、自分の父親との戦闘術を比べていた。似ている、というより、瓜二つ。同じビッグコンボイ、だが、異界の者同士。つまりは、垢の他人のはず。だが、似ていると、いや、同じだと感じている。ヴァロックは、まだ、この世界に来る前、自分の父親と今回のようなことをしたことがある。だから、感じた。同じであると


「・・・1度、対峙した相手の戦闘パターンは、覚えている。だから、分かる。同じだ」


グイッとグラスの中の酒を飲み干す


「・・・・・・だが、同じでも、違う」
(そう、違う。違うんだ)


言い聞かせるように、空になったグラスに酒を注いだ



その夜。ビッグコンボイはとても困っていた。今、彼の居る場所はとても騒がしい。今や食堂は宴会場と化していた。理由は分からない。だが、周りは飲めや歌えや、どんちゃん騒ぎ。ついでに、自分の前にコップにも酒が注がれている。彼は思いっきり溜息を吐いた


BC(何なんだ、コイツらは。というか、良いのか?船員全員じゃないか;;)


そう。ほぼ、全員が酒盛りをしているのだ。こんな時に敵が着たらどうするつもりなのか。何だか、自分の考えに同意するかのように船の駆動音がしている気がする。そういえば、生きた船だと言っていたなと思い


BC「・・・オマエもそう思うか;;」


呟けば、同意の音が聞こえた気がした。深い溜息を吐いて、とりあえず、出された酒を飲み干し、音も、気配も殺して、その場を離れた。何の目的もなく、ただ通路を歩く。もう溜息しか出ない。何なんだ、此処の連中は、とまた溜息。その時、自分が通り過ぎようとしていた扉が開いたので見ると、其処からユラリと現れたのは


BC「?・・キャプテン・ヴァロック?」

「?・・・ん?」

BC(ぁ、此処は、艦長室か。だが、なんだ?様子がおかしい)

「・・・」

BC「・・・なんだ」

「・・・ん」

BC「!?!?」


突然、ギュッと抱きつかれた。ビクリッと体が強張る。何事だと彼のブレインは必死に解析しようとするがその答えが導き出される前に中に引きずり込まれた。抵抗するが、どこから、そんな力が出るのだろう?逃れられない。ソファにドサッと乱暴に座らされる


BC「〜〜〜ッ!・・・おい、何の真似だ!!」

「・・・ん?」

BC「・・・話によっては、ただでは・・」


言い終わる前にヴァロックはソファに座り、コテンッと横になったかと思うと彼の腰に手を回した


BC「!?・・おいっ!」

「ん〜・・・」

BC「一体・・・」


ぎゅ〜ッと抱きついてくるヴァロックに普段の感じは無い。何だと思って、ふと周りを見れば、酒瓶がかなりの本数転がっている。もしかして、これは


BC「・・・・・・酔っているのか?;;」


思い当たるのは、もうこれしかないと告げている。ヴァロックは酔っている。だから、こんな行動を起こしているのだと


BC「・・・」

「・・・ん」

BC「っ!?」


今度は、腰にスリスリと擦り寄られる。身を縮こませ、より近づこうとする。まるで子どもだ。だが、これが、もしかすると彼の本心なのかとも思う。本当は、何よりも弱いのではないかと。頭に手を置いて、軽く撫でてやると、もっと、と強請るように顔を摺り寄せてきた


BC「・・・はぁ;;」


本当に世話が焼ける、とビッグコンボイは思った。チラリと見れば、眠っている。これで自分より年上だという。警戒心のカケラもあったものではない。自分が寝込みを襲うような真似はしないと分かっているからの行動だろうが。確かにそのような卑怯な真似はしない、というより、したくない。今は、彼らの目的を知ることが任務であって、この男の暗殺が目的ではない。それに、それは自分の仕事でもない


BC「・・・それにしても、良く眠っている」


本当に良く眠っている。寝ていないのだろうと思うくらいの眠り具合だ


BC「・・寝ていないのか?」


何日も徹夜しましたというような眠り。しかし、この船は生きているからか、自動操縦で殆ど事足りているようだし、緊急時もすぐに対処できている。正直、自分が教官時代よりもかなり、暇を持て余していると思えるのだが


BC(・・それよりも、まず、寝ているのだから、脱出すれば良いか)


そう思って、横に移動しようとするも、彼の手は離れない。ダメだ、とすぐに諦める


BC「〜〜〜〜〜〜っ;;」


本当にどうしようと思う。そこで


BC「・・・イデア;;」

イ「・・はい」


呼べば、すぐにやって来た


BC「コイツをはがしてくれ」

イ「・・それは、少々御受けできかねます。相手は船長ですから」

BC「・・・こんな格好をしていてもか;;」

イ「はい♪」

BC「・・・・・・」


ニッコリ笑顔で言われてしまい、ビッグコンボイは本当に深い溜息を吐いたのだった。数時間後、ヴァロックは目を覚ました。まだ眠り気を帯びて、ぼんやりとした瞳


BC「・・・やっと、起きたか;;」

「・・・?」


声のした方を見れば、自分の手が腰に回されているビッグコンボイが居た。そこでヴァロックは「あぁ、そうか」と呟いた


「・・・どのくらい、寝ていた?」

BC「・・大体、5時間、と言ったところだが」
(この状況に何にも思わないのか;;)

「・・・そうか。ん」

BC「!?!?・・おい」


摺り寄せてくるので身じろぐ。もう酒は抜けているだろうに、この男は、こんな仕草をする


BC「・・・離れろ」

「・・・嫌だ」

BC「・・は?」

「・・・・・・もう暫く、このままで居させろ」

BC「・・・俺は、抱き枕じゃない」

「・・・分かっている」

BC「なら」

「・・・だが、心地良い」

BC「?」

「・・この、船の駆動音と、同じ、音がする」


同じ音というのは、自分のスパークの音だろうか。確かに、この船の駆動音はどこか、スパークの音と同じような音がしないでもないが、何故、その音と自分のスパーク音が同じだというのだろうか。そんなに似ているのか。他の奴等のスパーク音でも良いだろうに


BC「・・他の奴でも同じだろう?」

「・・・いや、違う。同じなのは、オマエのだけだ」

BC「?」


そう言い、ヴァロックは再び瞳を閉じてしまった


BC「・・訳が分からん;;」


分かっていることは、自分がまだこのままで居なければならないということだ


BC「・・・はぁ;;」


溜息をすると幸せが逃げると誰かが言っていたがそんなこと知ったことではない。もう今日だけで何回目になるか分からない溜息を漏らした



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