*短編*

□好きになるかは
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「臨也、ウザい」

いきなり何を言うかと思えば。
俺の部屋のソファーで体育座りをしている彼女─といっても恋愛関係ではない佳乃を横目に思う。
そんなこと何回も言われてるから十分分かってるつもりだけどなぁ…と。

「なんでって聞いても理由はわかるから何も言わないよ」

俺がそういうと佳乃は片頬を膨らませて俺を睨んだ。
もっとも、本人はそのつもりだろうけど、シズちゃんに比べればなんてことはない。
シズちゃんも大したことないけどさ。

「どうせ、幼なじみのシズちゃんを傷つけるから…とかでしょ?」

率直に答えを言うと佳乃はうっ…と呻いた。

「あと、シズちゃんが好きだから…とか」
「それはない!」

即答?
佳乃はパッと顔をあげてきっぱりと言った。

おかしいな…。
俺の情報では、佳乃は子供の時からシズちゃんにべったりで、大好きだって話だったんだけど。

ちょっとした困惑をしていると佳乃は続けて話し出す。

「だって私、他に好きな人いるもん」
「…へぇ」

これはいい。
いいネタが出来そうだ。

デスクの前から立ち上がって佳乃が座っているソファーまで歩いていく。
その間も俺は質問をしていた。

「それって誰?」
「…珍しいね、臨也から聞いてくるなんて」
「ちょっと興味を持ってね…」
「…言っていいの?」

少し間を空けて言った彼女の顔はほのかに赤かった。

なんだ、生意気なだけじゃなくてちゃんと人間らしいこともするのか。

「あのね…

臨也」

「…は?」

意外な答えだった。
一瞬、自分の耳も疑った。
だって、あまりにも平然とした顔で答えるから。
本気じゃないだろうとさえ思える。

「私、臨也のこと好きだよ」
「…シズちゃんは?」
「もちろん好き」
「………」

それは…「好きな人」といっても友達としてってことか。

「でも、臨也はその上の『好き』なの」
「…つまり?」

答えはわかってきた。
でも、俺はこういうのが好きだから。

「ウザい。けど好き。誰よりも」
「…そのウザいがなければ合格なんだけど…」

「なんで? だってそれが臨也…」

そこまで開いた佳乃の口を人差し指でそっと押さえる。
佳乃は小首をかしげて、はてなを浮かべていた。
そんな彼女に微笑みかけてそっと額にキスをする。

「? 臨也?」
「佳乃がいくら俺を好きだといっても、俺が佳乃を好きだとは限らないからね」
「…?」

「少しの間、保留」

そういって営業スマイルでもない笑顔を向けると佳乃の顔は見たこともない位一気に赤くなった。


俺が佳乃を好きになるかは…

秘密。






―END―

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