めいん

□弟達は皆可愛い
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メタルマンは足音も隠さずに青い後ろ姿に近付いて行く。
青い装甲に身を包んだロボットは、それを意識していないのかカメラのシャッターに掛けた指に力を籠めていく。
レンズは一番下の弟が小さな鉢に移して飾った、可愛らしい白いかすみ草に向けられており、花に集まる光を飲み込もうとするようだった。
その様子に眼を細め、メタルマンはシャッターが切られる瞬間を待ち、一歩後ろで静かに待機した。
自らの内部で鳴り続ける小さな稼働音さえ煩く感じ、眉を顰めると心地良い音が弟のカメラから響く。
青い後ろ姿が背筋を伸ばし、カメラを下ろしてこちらを振り返ろうとした。
メタルマンは振り返る弟の横顔が自分を視認する前に、微笑みを瞳に浮かべて手を伸ばした。
青い弟、フラッシュマンの尻に。

「何か用……ギャアアアアッ!!!? 何でテメェはケツ掴んでんだッ!! 何が目的が全ッ然分かんねェんだよッ!!」
「目的があって尻を触るのではない。尻を触ることが目的であり糧である。from DWN.009 Metalman」
「ただの変態の戯れ言を名言風にしてんじゃねェェェェッ!!!!」

フラッシュマンがシャッターを切るまでの静かな空間は、キレた怒鳴り声であっさり霧散していった。



「ったくよォ、飽きずにケツ掴みやがって……。テメェ、外でもンなことしてんのかァ?」
青筋を立てて睨みカメラをテーブルに置いたフラッシュマンはメタルマンに問いかけた。
「いや、お兄ちゃんは可愛い弟達以外の尻は掴まないな。他の者にお前達にするようなスキンシップはしない。むしろしたくない。基本、博士と弟以外この世の無駄だと思っている。それに可愛い弟の尻が一番可愛いからな、俺は堪らん」
「こっちが堪ったもんじゃねェッ!! 俺等にその変態の矛先向けてんじゃねェブラコンがッ!! つーか、ブラコンってこんなじゃねェだろッ!?」
「『Brother complex. 兄、弟に対し強い執着や愛着をみせることを指す。通常、姉や妹の場合は病的で異常だという認識が強いが男兄弟では強い絆として肯定的に取られる』
間違ってはいないだろう。
ちなみにもう一つ違う単語を教えよう。
『痴漢. 異性、稀に同性に対して自らの性器の一部を露出したり、胸や尻、性器を布越し又は直接触るなど猥褻な行為を働く者を指す。嫌悪感を催す行為であるため、法律的にも倫理的にも厳しく罰せられる。漢の字が用いられるように痴かな(愚かな)ことをする漢(男)を指す』
ふむ、フラッシュには俗語や流行り言葉ではないが辞書何百冊分の単語が入力されていると思ったが……」
「知ってんに決まってんだろうがァァァァッ!!!! だから、困惑してんだろーがッ!! しかも、痴漢の説明まで付けてんじゃねェェェェッ!!!! そりゃあ自分から言ってんだろッ!? 兄に『痴漢です』って告白されて、俺にどーしろってんだ変態痴漢野郎ッ!!」
「その勢いだ。そうやって罵るがいい。怯えた小鹿のような目が堪らん。痴漢発言で顔が真っ赤になりおって。このピュアボーイ、食べちゃうぞ」
テーブルを挟んで向かい合わせの席でフラッシュマンが、無表情な兄に掴みかかる。
だが、メタルマンは無表情に楽しそうだ。
痴漢呼ばわりも何のそのである。
フラッシュマンは脱力すると、椅子に座り直した。
堪ったものじゃない疲労感を感じたらしい。
「特に……俺とバブルばっか被害にあってねェか? バブルは心が広いから好き勝手やってんのは分かるけど、俺ァ露骨に嫌がってんだろ。クイックとかクラッシュとかにしろ。そして鉄屑になっちまえや」
「やったことはあるさ。いや、弟達全員の尻は全て掴んで揉んださ」
「そーかよ……って、エエエエッ!? テメェ、エアー兄貴もやったのかッ!?」
「YES、エアーはバブルがまだ出来たばかりの頃だったか」



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