「あ、お前っ」
一緒に学校から家までの帰り道を歩いているといきなり留三郎は止まり、私を指さしてきた。
「なに?」
“人を指差しちゃいけません”って習わなかったのかなこの人は。
「靴、踏むなよ。」
“物は大事に扱えよ?”なんてお父さんみたい。…じゃなくって、靴の話か。
「あぁ、これ…」
私はローファーの踵を踏んで履いていた。それがなんだか気に入らなかったらしい。
「うん、ごめん。でも私、普段なら靴踏まないのよ。」
そう、私も靴踏むのは嫌いなんだ。なんか気持ち悪いから。よく踏んで履かれる代表のコン●ースも踏まない。でも
「これ、ちっちゃくなっちゃって。」
“なるほど”と言って何かを考えてる留三郎。良い案でもあるのだろうか?
「もうすぐ誕生日だろ?買ってやるよ、靴。」
え、なにそれ。嬉しい。
「幼なじみとして?」
留三郎の気持ちには薄々気付いていた。だってそうじゃなかったら毎日“危ないから一緒に帰るぞ”なんて言わないでしょ。こんな見通しの良い道通ってるわけだし。だからちょっといじめたくなっちゃったんだ。
「…ちげぇよ。」
あれ、そっぽ向いちゃった。
「好きだから。プレゼントあげたくなる。」
「靴が好きなの?」
「ちがっ…!」
「嘘。ごめんね、からかって。私も留三郎がすき。小さいときから。ずっと。」
これはからかってないよ。
END
(…まじかよ)
(留三郎まっか!)
(う、うるせぇ!)