Rikkai

□ありがとうのなでなで。
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しとしとしと。
豪雨でも霧雨でもなく、
ただただ降り続く雨。

昔の人が梅雨という名前を付けたくらいだから、
この時期に雨が降るのは仕方がないのかもしれない。

でも、雨が降ると何となく気落ちしてしまうのは、
多くの人に当てはまることなんだと思う。



しかもそれは、
くせっ毛の女の子にとっては尚更のことで。


案の定私は、

朝イチで丁寧にブローして来たにも関わらず、
お昼になる頃には毛先があらぬ方向に飛んでいっている自分の髪の毛を見て、
大きな溜息を付いた。




「…どうしたのだ?」


私の溜息が盛大過ぎたのか、

前の席の真田に話しかけられた。



「…なんでもない。

真田には分かんないよ。」


サラサラストレートの真田なんかに。

心の中でそう付け加えた。



しかも、髪の毛なんかで悩んでるなんて言ったら、

たるんどる!って言われそうだしね。





「……。」




「……真田?」



急に黙り込んじゃってどうしたんだろう。





「…確かに俺は、

いわゆる“今時”のことは分からん。


だが、お前の悩みを聞けるくらいの人生経験はあると思う。

…お前の悩み、聞かせてはくれないか。」


お前が話したくないなら別だが、
と最後に付け加えて、

真田は珍しく自信のなさそうな顔をした。







「……ぷっ、あははははは!」



「なっ、

人が真剣に話をしたのにも関わらずそれを笑うとは…

たるんどるっ!」



「ごめんごめん、

真田が“今時”とか言うからさー…」



「俺だって、自分が古風なことぐらい理解しているのだっ」






あー
お腹痛い…。


真田、自分が“イマドキ”ではないことは自覚してるんだなぁ…。








急に、少し頬を赤らめている真田が可愛く見えた。


それと同時に、
私なんかの悩みを聞くために色々とさらけ出してくれた、真田の優しさを感じた。



だから、









ありがとうのなでなで。






(なっ、何をする!)

(んー何となく…)

(…たるんどる!)




(で、お前は何を悩んでいたのだ?)

(…真田のサラサラストレート、羨ましいなぁーと思って。)

(そんなことで悩んでいたのか?たるんど…

(結婚したら、子供の髪質は真田に似ると良いなぁ。)

(……………そ、そうだな…。)





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