Hyoutei

□キラキラ
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あの人を最初に見たのは、図書室だった。


いつも窓際の席に座り、ピンと背筋を伸ばして本に目を落とす先輩。


それだけでも十分美しいと思ったが、



何より、
窓からの日差しでキラキラと輝いている栗色の髪の毛が、

俺の心を掴んで離さなかった。





キラキラ





あれから俺は、
部活のない日や昼休みには図書室に通うのが日課になっていた。

でも結局話し掛けることは出来ず、
先輩の指定席の近くを通ってみたり、
少し離れた席から先輩を見ることしか出来なかった。


自分でも、自分の女々しさに嫌気がさすくらいだ。

普段、下剋上などと口に出している自分だったが、

人を好きになると、
これ程まで臆病になるものだとは。



―それでも。


先輩の姿を見ることが、

自分にとっての癒しになっていることは確かだった。


見ているだけで、

下剋上という名の自分への戒めを持ち続けている俺の、

心の緊張がほどけていく気がした。








あれから二週間。


新芽の季節が終わり、
恵みの雨が降り続く季節になった。


先輩の髪が日差しで輝くことは少なくなったが、

相変わらず俺は図書室に通っていた。






そんなある日。





ちょうど先輩の近くを通り過ぎようとした時に、

耳をつんざくような雷がとどろいた。



「―ッ?!」



思わず窓の外を見上げた俺の視線が次に捕らえたのは、

先輩の目の中の自分、だった。





「―落ちた、ね。」



「そうですね…。」




思わず目が合ってしまったことに戸惑いつつも、
心拍数が上がっていくのを止められなかった。





「最近、よく降るよね。」

「はい。」






「私、

君の髪が日差しでキラキラ輝くのを見るの、

いつも楽しみにしてたんだけどな。」




「え…っ」











先輩。



先輩のこと、

もっと知ろうとしても良いですか…?









(俺もです、と答えたら)
(先輩はキラキラした笑顔で笑った)






これからの毎日も、ずっとキラキラ!


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