いつわりびと◆空◆

□お前は真っ直ぐ進んでけ
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『頭、このガキどうします?』
『金もほとんど持ってねぇですし』
『片付けますか?』


段々に意識が戻ってきた。
ザワザワと男たちが話し合う声が聞こえ、霞んだ視界に男たちと岩の壁が見えた。洞窟か?

・・・腕が動かない?縛られている?!!


『いや、起きるまで生かしとけ。コイツは腕が立ちそうだからな。」


さっきの子供の声。
一気に意識が俺の元に戻ってくる。

起きるか?いや、寝た振りしてて話し聞いて全部把握した方が良いだろう。


「それにしても、やっぱ頭は頭良いですね。今回のも完璧でしたよ。」
「当たり前だろ?俺は偽り人だぜ、こんな奴騙すくらいチョロイよ。」


男たちの下卑た笑いが聞こえる。
何だ?要するにココは偽り人達の集まる洞窟で、子供がコイツ等の頭で・・・・
要するに俺・・・騙された?
・・・・!!!う、空は?!ぽちはどうした?!まさか、捕まった?



「ねぇ、僕の演技完璧だっよね?お兄さん。」



子供が俺に話しかけてきた、俺が起きてる事に気付いたか・・・



「テメェ・・・偽り人だったのか?」
「そうだよ?僕等はお兄さんみたいに、人が良い人騙すのがお仕事なんだよ。
 本当は騙した奴からあるもの全部貰って、そこら辺に捨てるのが普通なんだけどね。
 でも、お兄さんは特別だよ?良かったね。」
「このガキっ!!」
「心外だなぁ、お兄さんだってガキじゃないか。だって、僕に騙される位だしね。
 もう一人の方は、僕たちが演技してるって分かってたみたいだね。お兄さんが捕まったと同時に逃げちゃったよ?
 ・・・・・・ねぇ、お兄さん何で自分生かされてるか分かる?」


空は逃げたのか・・・良かった、俺のせいで捕まったなんてそんな事無くて良かった。

じゃあ、今は自分の事に集中できるな。

俺は何とかこの拘束を外せないか考え始めた。
少しでも良い、時間が欲しい。
そう思って、俺は「仲間にする為」と喉まで出掛かった答えを飲み込み、代わりに別の答えを吐き出した。


「さぁな、検討も付かねぇな。」
「またまた、分かってる癖に。
 仲間にする為だよ、お兄さん僕の手下を一発で伸しただろう?その力が気に入ったんだ。
 本当はお兄さんの仲間の方が欲しかったんだけどね、逃げられちゃったし・・・贅沢は言えないよね。
 あ、そうそう、仲間になるからには、嘘の見破り方とか、覚えてもらわないといけないね。お兄さん嘘見破るの苦手そうだしね。」

「・・・・・・・・」
「どう?僕等の仲間にならない?どうせ断ったって殺されるだけなんだからさ。」



俺の答えは分かりきってる。



「・・・・・残念だったな、俺は偽り人が嫌いなんだよ。」



子供は一瞬顔から表情が消えたが、すぐに下卑た笑顔になった。


「・・・そう・・なら、しょうがないね。
 殺せ。」



子供の冷たい声が、俺の近くに居た男を動かした。
刀を持つ手が、俺の心臓に狙いを定める。



「腕の良かったお兄さんに大サービス、痛みを感じないほどすぐに殺してあげるからね。」



子供の明るい声が近くから聞こえるような、遠くから聞こえるような、視界が霞む・・・全てが曖昧になった。

俺・・・殺されるのか・・・?腕が使えないんじゃ・・何にも出来ねぇ・・・


そう思った瞬間だった。俺の耳にバキッと言う音が聞こえた。

それから銀色の髪、白く長い帯、忘れるはずの無い関西弁。
間違いない、アイツだ。



「せやから言ったろ薬馬、行っちゃいかんってのぉ。」
「う・・つほ・・・?」
「なんや、ぼろぼろやん?大丈夫か?」


いつもと変わらない空を見て、少し気が楽になった。それと同時にいきなり胸が動悸を始めた。

安心したせいか?いや、でもコイツ見て安心もなぁ・・・


空が腕の拘束を解いている所を、しばらくポカンと見ていた偽り人たちが騒ぎ出した。


「て、テメェ誰だよ?!」
「ってか、何しに来た?!!」

「お前等、黙ってろ。」


頭である子供の声に辺りはシンッとなる。



「誰かと思ったらさっきのお兄さんじゃない。どうしたの?あ、もしかして僕等の仲間になりに来たの?」
「アホか、そんな事あるかい。ワシはちょっとヤボ用があったから来ただけや。
 それに、残念やけどワシはお前等なんかの仲間になる気はこれっぽっちも無いわ。」
「そぅ、残念だなぁ・・・でもね、お兄さん。お兄さんに仲間にならない選択肢なんて無いんだよ?
 だって・・・お兄さんは僕等に囲まれてるんだからね。」
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